15 自分の脳内は妙案を見つけたと喜んでいた
「……」
直ぐに離した。
なに調子いいこと言ってるんだ
僕は悠人達の言葉を聞かずに逃げ出したんだ。
今更会う資格なんてない。
「……僕の分も、大学頑張ってきてくれよ。悠人は頭がいいからさ、元気だし。すぐ友達もできて人気者になるよ」
「……そういう話じゃねぇだろ?」
「悠人ならいけるって。じゃあ、僕は戻るよ」
「おい、明人! まだ話すことが……」
「僕と……友達になってくれてありがとう。僕のことはもういいから、がんばってね」
「明人!!」
一方的に言葉を投げて、玄関から居間に向かって歩き出した。
これでいい。僕と悠人はもう違う道を歩きだしたんだ。
もう、これ以上関わることなんてない。
「──なんでお前が……そんな目に遭わないといけないんだよ……っ」
居間への扉に手をかけたら、悠人の声が微かに聞こえてきた。
足が止まる。
堪えていた涙が込み上げてきた。
「……そんなの、僕が知りたいよ」
それに聞こえないような声量で呟き、扉を閉めた。
「兄さん……」
「……ちょっと、ごめん。勉強を教えるのはまた今度ね」
「……うん」
恐らく佳奈には会話が聞こえていた。合わす顔がない。
不甲斐ない兄だと思われたに違いない。
自室に戻って、頭から布団を被った。
先が明るい友人と自分の先の見えない不安と対比してしまい、心が押し潰されそうになった。
お互いに本命の大学に受かったら、行きたかった遊園地の予定を立てて。部活動の後輩や顧問を連れてどこかお祝いをしにいこうって話もしてさ。そんな話をして、楽しく教室の隅で笑い合って。小遣いを貯めて、頑張って、頑張ってっ……。
「楽しみにしてたのになぁ……っ」
なんで、ほんとうに、僕がこんな目に合わないといけないんだ。
あれだけ頑張って来たのに……。なんで、ぼくなんだ。
「…………」
──。
あ。死にたい。
ぽつりと、落ちてくるように。そんな感情が出てきた。
そんなこと思ったことなかったのに。
突然と選択肢の中に出てきた。
すると、脳内がソレ一色になった。
脳みそは停止し、妙案を見つけた気分になって。
目先の恐怖から逃げるために、道を見つけたと喜んで。
死んで楽になれば、解放される。
どうやったら死ねるんだろう。
首吊りってしんどいって聞くしなぁ。
────耳鳴りが酷くなってきた。
何かが鳴いてる気がする。
でも、うまく聞こえない。
ほっといてほしい。今、やっと答えを見つけた気がしたんだ。
だって、このまま生きてても、何もない。
何も出来ない。未来がないんだ。
暗い。なにしてもダメだった。
これからも何してもダメだったら……もう何もしなくていいようになりたい。
(そうだ……死のう……………)
誰にも迷惑をかけたくない。
こんな自分なんていなくなった方がいい。
この辛さがずっと続くなら、死んでチャラにしたい。
目の奥に違和感を感じるまま、扉を開けてそのままいつもの足取りで玄関まで向かう。ドアノブに手をかけると、後ろから声がかかってきた。
「お兄ちゃん……?」
その声もなんだか日本語にも思えず、頭が処理してくれなかった。
でも、大丈夫だよ。
もう、あとすこしで、楽になれるんだ。
「…………ちょっと、外、出てくる」
誰に向けたかも分からない笑顔を浮かべて、僕は何も持たずに外に出ていった。
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