S級ダンジョン配信者の無自覚チートの俺がSPを稼いでダンジョン経営する予定です。仲間は全員美少女!サスペンスあり??

夕日ゆうや

第1話 バズ王に俺はなる!

 バズらせる。

 それはSNS上で好意的な意見で盛り上がることである。

 負の感情で支配されたとき、それは炎上という言葉に移り変わる。

 これはそんなバズの王を目指す一人の男の話である――。


「バズりたい」

「は?」

「バズ王に俺はなる!」

「なに言ってんの? お前」

「いいだろ。そうだ。今流行のダンジョン探索を配信するか?」

 ダンジョン。

 それは突如として日本に現れた謎の空間である。

 日本各所に二十近く現れたそれは、様々な素材をもたらした。

 燃料になるもの。加工して使うもの。食べ物。

 などなど。

 様々なものがあったお陰で日本にはゼロからのスタートが約束されたと言われている。

雷斗らいとはダンジョン経験あるのかよ?」

風斗かざとだ。経験ないけど、レベル低いダンジョンならいけるって!」

「いや、それ死亡フラグだから」

 ケラケラと笑う友人たち。

 だが俺はいってみせる。

 最高のバズらせ王に!!


 自転車で近くにある南三陸ダンジョンに向かう。

 武器はブロンドソード。

 浮遊型双方向通信であるドローンを展開。

 仲間はいない。

 ちなみに今の日本では魔物の増加が認められ、武器の携帯をされている。

「ま、これくらいできないとな」

 毎日筋トレしていた成果があったのか、剣は振るえる。

 ダンジョンの入り口、その寒々とした空気が電波してくる。

 まるで鍾乳洞の入り口のような雰囲気に身震いする。

 これからここを攻略する。

 ブロンズソードを振るえば、たいていの敵は倒せる。

 目玉の敵や樹木に目の生えたキモい奴らをぶった切っていく。

「こ、こないでっ!」

 女性の叫び越えが聞こえてくる。

 女の子らしい。

 俺は慌ててその先を目指す。

「大丈夫か!?」

 その視線の先にはほぼ裸体になった女子が一人。

 枝のようなものをくねらせて少女を襲っている。

「その女の子から離れろ!」

 俺は走り出して剣を振りかざす。

 斬撃が樹木の枝を切りおとす。

 自由を得た女の子が安全な後方へと下がっていく。

「き、キミ……!?」

「任せて。俺がやる!」

 剣を振るって樹木のモンスターを切り刻んでいく。

「す、すごいね。キミ……」

 ボロボロになり、その綺麗な四肢が目立つ巫女服。

「ああ。生き残っていてくれて良かった」


《何々? エロい場面が見られるって、ここ?》

《あー。マジでモザイクが邪魔だ》

《エロい身体。うらやま!》

《さすがダンジョン、なんでもありだな》


 配信の画面を見るとやや辛辣なコメントが多い。

 特に彼女に向けた言葉が多い。

 俺は着ていた上着をその少女にかぶせる。


《うわ。やりやがった》

《もっと見ていたかったのに!》

《サプリちゃんの裸拝みたかった!》


 サプリちゃん?


《なんだよ。このいけすかない奴》

《エロ目的で見てんだよ。邪魔すんな!》


 サプリちゃんと呼ばれるこの子への声は酷い有様だ。

 きっとエロでしか閲覧者を呼び込めなかったのだろう。

「帰るぞ」

「わ、分かったよ」

 気丈に振る舞うサプリちゃん。

 どこか負けず嫌いな顔を浮かべる少女だった。

 俺はその子を連れてダンジョンの外に出る。


《栄養ドリンクちゃんが配信始めるって》

《マジかよ。そっちとつるわ》

《オレらの友達はドリンクちゃんしかいない!》

《お。ワッシャーも配信やるじゃん》

《ワッシャーなんて底辺のVじゃん!www。受ける~ww》


 彼らの言葉を聞いていると頭が痛くなる。

 こんな奴らに好かれてどうする。

 どうしてサプリちゃんを追いかける。

「こいつら、ウザいな」

「でもわたしにできることはこのくらい……」

 俯くサプリちゃん。

「でも、身体を売るのとは違うよ!」

 俺はそう告げると、サプリちゃんは顔を上げる。

「俺はキミには正統な配信者になってもらおうと思う」

「正統な……?」

 不思議そうに顔を上げるサプリちゃん。

 配信を一度止めると、俺は頭を抱える。

 この子は自身を犠牲にしてでも配信者になろうとしている。

 それを止めるのが俺の本懐か?

 いや、彼女にとって、それは本意ではないのだろう。

 でも、俺は見過ごすこともできない。

「キミ。俺とパーティを組まないか?」

「パーティ? 仲間という認識ですか?」

「ああ」

 この子、敬語を使ってくるけど、俺と同い年くらいに見えるんだがな。

 しかし、こんなことでバズらせ王になるなど。

 それは俺の望むところではない。

「ちっ。厄介なことを」

「ご、ごめんなさい」

 覇気のない受け答えをするサプリ。

「あー。お前はサプリって名前でやっているのか?」

「はい。あの、あなたは?」

「俺は髭ピタだ」

 首を傾げるサプリ。

「髭ピタ?」

「おかしいだろ? 昔友人が書いた名前が由来だ。お前は髭が伸びるのが早いってな」

「ははは。でもお陰で助かりました。わたしに構わず行ってください」

「……俺も」

 恥じらいながら言葉を口にする俺。

「俺も、仲間が欲しいと思っていたんだ。俺と一緒に来てくれないか? サプリさん」

 目を潤ませて、頷くサプリ。

「はい。よろしくお願いします」

 ペコリと一礼するサプリ。

「髭ピタさん」

「ああ。もういいよ」

 俺は軽く手をふり、応じる。

 くそう。誰だよ。そんなペンネームを与えた奴。

 いや使おうと思った俺が悪いんだけどね。

「ふふ。可愛い御仁」

「ん。なんか言ったか?」

「いいえ。別に」

 ふいっとそっぽを向くサプリ。

「まあ、いい。食事を終えたらすぐに離脱する」

 俺はレーションを渡すと早口でそう言う。

 レーションといってもいろんなタイプのものがある。

 今回は羊羹のような、固めて食べるタイプの栄養食である。

 その味はあんまりおいしくないらしいが、ミリタリー感が出てうまいと感じる人もいるらしい。

 まあ、俺はそんなことどうでもいい。

 しかし、二人になれば俺は後方から狙撃ができる。

 対物ライフルや狙撃銃を扱うのが得意な俺にとっては前衛がいるのといないとでは違う。

「わたし、一人じゃなにもできなかった!」

 うるうると目を潤ませて、零れ落ちる雫。

「わたし、もう限界!」

 揺れるおっぱいに吸い寄せられながらも、そう答えるサプリ。

「ああ。そうかい。でも、俺はお前がまだ終わりじゃないと思う」

 サプリと言えばここ数ヶ月で力を伸ばし始めていた新人Uチューバーだ。

「俺がサポートする。だからお前はお前のために配信を続ければいい」

 Uチューバーと言えば、事情を抱えた者が多い。

「……分かった。わたしと協力してくれるか?」

「もちろんだ。ただ、キミの顧客は奪う!!」

「……っ!?」

 驚いたような顔を浮かべるサプリ。

 俺は全てを許容する訳にはいかない。

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