【R15指定】チュー、しちゃうって!

進藤 進

第1話 だから、チュー、しちゃうって!

「お前が、俺の代わりをする度胸があるなら・・・」

低い声が耳元に。


「俺は・・・」

見上げると、キリっとした眉の下に血走った瞳が。


「いつでも・・・」

眼球に狼狽える自分が映っている。


(ああ・・・)

タメ息が漏れる。


蠟燭の炎がヤツの顔を照らす。

彫りの深い眼差しにオオカミのような眼光が光る。


(だめだ・・だ・・め・・・)

俺はヤツを殺すつもりで来たはずだ。


(なのに・・・)

吸い込まれる。


ヤツの眼差しに。

幼い頃から刷り込まれた感情。


(あぁ・・・)

分かっているのに。


(そう、そぅ・・・なんだ・・・)

分かっている筈なのに。


「ち、違うっ!」

最後の気力を振り絞り、俺は立ち上がった。


そして。

反撃に出たのだ。


狼狽える表情のヤツに。

ヤツの耳元に、今度は俺が。


「弱いウサギが強いオオカミを・・・」

ヤツのこめかみがビクンと震えた。


「おぬしは・・・」

ヤツの目が俺を見る。


俺は。

言葉を繋げず。


ヤツを見つめた。


そう。

見つめるしか、なかったのだ。

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