双剣の騎士
むらさき
プロローグ
長久の刀剣
手に取ってはいけない。
自身の本能がそう語りかけてくる。
小さいころから、村はずれの祠には近づくなと長老から聞かされてきた。
どうして?とも、入りたいとも思わなかった。
周囲の子も大人たちもその言葉には従っていたのもあいまって興味もなかったのだろう。
ただ、浮かれていたのだろう。
父から一人で狩りをするのを許され、森の奥のほうまでつい来てしまった。
急いで戻ろうと考え振り返ったがその目に映ったものがそれを阻んだ。
人の手が加わったと思わしき紋様で、覆われた入り口を見た刹那、それが例の祠だと悟るのにはあまり時間はかからなかった。
今までかけらの感情も抱かなかったのにその瞬間だけは魅入ってしまう。そんな雰囲気が漂っていたのだ。
だからだ、俺が踏み込んでしまったのは......
中は少し薄暗く入り口から射す日光ぐらいしか灯りがない。着火の魔法を行使して辺りを照らす。
俺は少し恐怖を覚えながらも、興味という初めての感情を原動力に徐々に歩みを進める。
やがて見つけたのは黄金の柄を持つ刀剣、所謂ロングソードと言われる代物だった。
しかし通常のものとは異なり何か不思議な力を帯びている。そんな気がした
手に取ってはいけない。
自身の本能がそう語りかけてくる。
だがあまりにも......
「美しい......」
そう、美しいのだ。
一見ただ少し豪華なだけの凡庸なものに見える。少なくとも目に映る範囲ではそうだ。
ただ己の心がその事実を否定する。
まるで‘‘操られているかのように‘‘
取ってはだめだ。
いけない。それだけは......
理由はわからないが本能が抵抗する。
しかし足が動いてしまう。手が前に出てしまう。
だめだ。いけない
逆の手を使って必死に抵抗する。
けれども自分のものとは到底思えないほどの、とてつもない力が襲ってくる。
仕方がない
俺は手のひらに魔力を集中させる。
なぜこれほどまでに拒絶するのだろう。ただ手に取るだけ、触れるだけ。それだけのことじゃないか。
いいや、だめだ。
この刀剣が身に纏うそれは魔術にも似ているが違う。感じ取れないのだ、流れが。
俺が感じ取れない魔術などない。まだまだ子供だがその実力は騎士ぐらいなら優に圧倒する。その俺だがだ。
すでに解析魔術もかけたのだが一切理解できない。未知数の力、そして魔術と酷似する。結論はおのずと導き出される。はるか昔にその力で一国を支配し世界の破滅寸前まで追い込んだとされる代物。
‘‘魔法‘‘
各国で禁忌とされ使い手も一人残らず処分されたと聞く。
なぜそんなものがこんな辺境の村の近くにあるのだろうか。国が管理、もしくは破壊するのが本来あるべき形のもの。
いいやだめだ。悠長に考えている暇はない。仮に魔法の力を少しでも保有しているのなら絶対に触れてはいけない。
俺はため込んだ魔力を腕に向かって放つ。
腕は血をあたりにまき散らしなら自身のもとへと離れていく。
「なくなったのは惜しいが、致し方ない」
俺は急いで治癒の魔術を施して痛みを和らげる。
「これは長老に報告だな」
ふぅとため息をついてそう言葉をこぼす。
その刹那、刀剣が光り輝きあたりを照らす。
「嘘だろ......」
そうか‘‘血‘‘か......
しくじったな
そうつぶやくと男は光の中へと吞まれていく。
後日、一つの国が崩壊した
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先に公開しとけばと後悔しました。はい。
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