第一章
第1話 アレス・クリフォード
雨が体を蝕んでいく……。
眼前に迫るそれは俺自身を喰らおうと巨大な口を開き襲いかかる。常人ならばこの光景は耐えられないだろう……。
「ハァッッ!!!」
俺は地面を蹴り懐に飛び込みそれの腹を大きく切り裂いた。
「ふぅ……」
剣を鞘にもどし今までの疲れを全てだすように息を吐いた。あたりを見渡すと真っ赤に染まった大地が目に映る。
「これは後処理が面倒だな……」
そう言いながら懐にしまってあったナイフを取り出し、倒した魔物たちの処理を淡々とこなしていく……。
―――――――――――――――――――――――
「ただいまー」
「おおレイか。今日は少し遅かったな」
そう言って俺ことアレス・クリフォードの父、グレイは部屋の奥からでてくる。
「今日は獣種が多かったんだ。あいつら群れで動くからさ。それで時間がかかっちゃって」
「この時期だと……シャドーウルフとかか」
そう言いながらグレイは杖をつき近くの椅子に腰をかける。
グレイは俺の剣術の師匠であり、育ての親だ。今はとある出来事をきっかけに右足を失ったが昔は、かなりの実力者で国内でも随一の強者だったらしい。今ではこの地に隠居して実の息子である俺をここまで育ててきてくれた。
「そうだアレス。お前に手紙が届いてるぞ」
「手紙?」
「ああ。リーデル帝国学院からの推薦状だ。」
「はぁ!?リーデル帝国学院だって!?」
リーデル帝国学院はアンキーア帝国にある唯一の教育機関で、数あるもののなかでも一握りの才能をもつものでないと入れないほどの狭き門である。
推薦なんて創立以来一度もなかったと聞く。
どうしてそんな場所からわざわざ推薦状が来たのだろうか。
そんな俺の考えを読むかのようにグレイはこう告げた。
「そこの教師とは古くからの友人でな。使い魔を通してお前の話をしたんだよ。そうしたらその年でそれほどの偉業を成し遂げるとは!是非ともうちに!って」
「なぜそれを早く言わない……」
偉業って……。
そこまで大層なものでもないんだがな。
グレイの発言に呆れながら推薦状を手に取る。
「お前はこんなところで一生を遂げるような器じゃない。確かにここで魔物を狩り続けることは重要だ。だが実際この辺りの程度の奴らなんて足が片方しかなくともどうってことはない」
グレイは剣術もできるが同様に魔術に関してもそこらの奴らよりかは遥かにできる。片足しかなくとも魔術で補うことはできるしわざわざ剣を使わなくとも戦えはする。
一度グレイは俺に魔術で作られた義足を見せられたことがある。
その光景を目にしたときはおもわず感嘆の声を漏らした。
今までは俺が狩りをしてきたがそれは自分が進んでやりたいと言ったからやっていたことなのであってグレイができないから狩りをしていなかったと言うことにはならないしな。
「お前にも学院に行って交友関係を築いてほしい。こんな辺境の地じゃ学べないことなんかもあるしな」
「それにお前にとってもいい経験になると思うぞ。学院へ学びに行くことなんて滅多にないんだから。この俺ですらないんだぞ」
ガハハ。と大きく笑いながらグレイは俺に向かって告げる。
「まぁもう手続きとかすましちまったから拒否権はないんだがな。ああ、特例で面接とかは無しになったらしいから安心していいぞ」
「ま、まじかよ」
どうやら俺が学院に行くことは決定事項らしい。
「ということで行くぞ!リーデル帝国学院に!」
「ええー」
乗り気でないもののアレスはしぶしぶリーデル帝国学院へと向かうこととなった。
この先数多くの試練が待ち受けていると知らずに……。
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