第16話本当に……純粋に……

月日が経つのは本当に早い。


あの頃を思い出すと、何故君の言うことを疑うことなく信じられたのか、不思議に思うよ。


それだけ、あたしは君のことを

本当に……純粋に……


思えば、君の何処かが好きで。

気付いたら、言うことを正しいと信じていた。


ううん、本当は何も知らないだけ。

知らないから、君の言葉があたしの世界の全てだっただけ。


“君の言うことを聞いていれば、全て上手くいく"


そう思って今までついていったし、君の側にいるこそあたしの世界そのものだったの。


だから、いつしか君と連絡が取れなくなり、少しずつ気持ちが離れて幾度に、恐怖が心をエグるように襲って来て、怖かった。


それ故に涙に濡れた夜を何度も迎えては、君に出会った意味を考え続けたの。


何度も……何度も……


“君という夜を越えるにはどうすればいいのか?”


そして分かった。

越えるには、君の声を心から完全に消すこと。


“君は僕の言うことだけを信じていれば、必ず幸せになれるよ”


そんな嘘の固まりな言葉は、もういらない。


あたしは新しい道を歩む。


“その為に沢山の人の言葉を胸に抱く”


そう決めたから。


だから……


さよなら、愛おしいヒト


令和3(2021)年10月23日5:15~5:30作成


Mのお題

令和3(2021)年10月22日

「羊文学 夜を超えて」

※この曲を聞いて物語を作るお題です。

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