赤子吞み

苦悶

赤子吞み

 あ、はじめまして。よろしくお願いします。


 気分ですか? まぁ、ぼちぼちですかね(笑)

あぁ、ここまでは普通に車で運転してきました。

でも、最近〇〇町の大通りが祭りの準備してるとかで通行止めしてて、ちょっと細い道を通らなきゃなんです。そしたら、そこの小道の通りに純喫茶みたいなお店があるのを初めて知って、今度家族で行こうかって話してました。

先生はそのお店知ってましたか? ふふ、なんか落ち着いた感じで雰囲気よさそうな喫茶店でしたよ。


 え?本題ですか。あぁ、お母さんが相談したんですよね、私のこと。

私的にはもう大丈夫な事なんですけどね。一回だけでいいからカウンセリング受けてほしいってお願いされて。仕方なく、というと先生に失礼ですかね(笑)

ちなみにお母さんはどんなこと言ってましたか? はい、はい、あぁ、夢ね。

もう大丈夫だって何回も言ってたんですけどね。

一応、先生にも話した方がいいですか? はい、わかりました。


 

 夢の中の私は歩道に立っていて足元に段ボールがありました。その段ボールは漫画やアニメなら捨て猫が入ってそうなものでしたが、入っていたのは赤ちゃんでした。

 でも、その赤ちゃんは臨月の妊婦さんのお腹にいるような胎児ではなくて、目のような黒いなにかがあって、これから指が出来てくるであろう腕や足のようなものがあって、口もできてるんだか出来てないんだかわからないんですけど、なんかふにゃっと歪んでて、とにかくすべての身体の部位が未完成でした。


 普通に考えるとそんな子が段ボールの中にいるはずがなくて、いたとしたらもう死んでしまっているとわかります。でもその時の私は「早く病院に行かなきゃ」と感じ、自分の両掌に小さなその子を持って走り出してました。

 急いで病院を探していたのですが街並みに見覚えはありませんでした。しかし私はそれどころではありませんでした。


 掌の上のその子の身体が少しずつ溶けてきました。コップの中の氷のようにじわじわ溶けてきて、その子の身体の輪郭がその子自身が溶けた体液のようなものであやふやになってきました。


 私が急いで病院を探しているとクリニックを見つけました。ほんと、その時には半分以上溶けちゃってて、この子のすべてが溶けてしまう前に急いで中に入ると、いわゆる産婦人科の新生児室がありました。

そして、その新生児室のガラスの前にいる看護師さんに必死に、もうそれは必死に「赤ちゃん!!!助けて!!!!」とその子を差し出しました。


しかしそのような私の様子を見た看護師さんは一言

「それって赤ちゃんなの?」

といいました。その子を見ようと掌を見るとうすだいだい色に濁った液体だけが残ってました。「あーあ」って、もう「あーあっ!死んじゃった!!」って思いました。


なので、私はその子を吞み干しました。


 そこで目が覚めて、そのあと大泣きしました。夢の中といえど自分があの子を死なせてしまったという後悔と罪悪感でいっぱいになりました。だから、お母さんにも夢のこと相談して、それですごく不安にさせちゃったんですかね(笑)



 でももう大丈夫です!死んでなかったし!

ほら、ここにいるでしょ? あは、ほら先生にも挨拶しよ?

だめだこりゃ(笑)ずーっと私の顔見て笑ってる(笑)


あんな夢見たときはびっくりしたけど、本当に安心しました。

本当に吞んでよかった。

見てください、今もこんなに甘えちゃって。

今の子育て本だと出来るだけ抱っこしてあげた方がいいって聞きますけど、昔の人の中には「抱っこしすぎると甘えたになってしまう!」なんて言って親御さんに変なアドバイスする人もいるっぽいですよ。


怖いですよね。


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