第4話 同盟

 わしはオルネジア王国の王。名前をワズ=オルネジアという。一応4世らしいが、そのへんの歴史はよくわからないというか、どうでもいい。わしは新しいものが好きだ。この世界の国の中では、2番目に長い歴史を持つらしい。まあそれもあまり関係ないことだと思ってる。


 今日は、新しい国と同盟を結びに来た。昨日ヒカルと電話して聞いたら、「サンジーフ王国」と言うらしい。また意外な事実も知った...


「もしもし、ヒカルか?」

「こんばんは、王。いや、ワズ様。なにかご用でしょうか?僕は生活に不便を感じては居ませんよ。」

「そういうことではない。そう。あの時国の名前を聞いていなかったと思ってな。教えてくれないか?」

「ええ、あの国は『サンジーフ』と言います。なにも、今日決めた名前なので、知らないのも無理はありませんよ。」

「ああ、『サンジーフ』と言ったか。んんん!?今、なんと言った?」

「?ですから、今日決めたんですって。」

「は?」

「え?」


 色々と考え事をしていたら、門の前についていた。今日は我が部下と護衛合わせて50人のちょっとした行列だったが、後々考えるとそこまで必要なさそうだった。


「これが新しい国か...確かに栄えそうな感じはする。あとは我が元幹部を惹きつけ、恩人となっただけある王がどれほどの者か...この目で確かめてくれよう!」


「...では入るかの」


 わしは国に入った。噂には聞いていたが、ここまで程よいごちゃごちゃとした国は見たことがなかった。わしが今まで同盟や国境の結んだ国は都会ばっかりで田舎はほとんど相手にしてこなかったが、ここはそのどちらでもないような不思議な感じがする。俗に言う田舎のように山や川だけということでもなく、だからといってビル群がぎっしり詰まっているわけでもない。どうやら我らが学ばせてもらうところもたくさんありそうだ。


「こんにちは、私はこの国。サンジーフ王国の王の『シュウヤ』と言います。お初にお目にかかりますが、何卒よろしくお願いします。」


「わしはオルネジア王国の王。『ワズ=オルネジア』という。王自ら歓迎に来るとは、とても嬉しいです。こちらこそよろしくおねがいします。」


 とても良い人だ。そしてとても言葉遣いが王とは思えないほど丁寧だ。私は感服した。見習いたいほど。


「さすが我らの王!シュウヤ様ぁ!」


「さすが国の主!その姿素晴らしいわ!」


「...」


「2人は少し静かにしてよぉ!さっきも丁寧に落ち着いて対応しろと言ったのに!まったく...さ、こちらへどうぞ。向こうに見える大きい建物が迎賓館です。」


 わしはついていっている間景色を見てうっとりしていた。見たことがない文化がたくさん並んでいるのに、一切自然の景観を壊さない。むしろそれも同じ景観の一部として見ることすらも出来る。基本的に街の建物は木と石で出来ている。頑丈にしなければいけない建物はきちんとコンクリート製にしてある。しかし、いつまでも見ていられるなぁ...


「着きました。こちらです。」


 私は向こうの王に迎えられ迎賓館の中に入り、そこでも驚いた。他の知っている国は権力を主張するために金をありとあらゆるところにふんだんに使用されているが、この国はどうだろう。正面には花瓶にたくさんの花が生けてある。そしてつくりは質素ながらもどこか気品を感じられるような感じがする。むしろ全部金で作られた装飾が下品と思えてきたほどだ。とにかく、このセンスは素晴らしいのだ。


「こちらへどうぞ。」


 わしは椅子に腰掛けた。とても質感が良い椅子だった。ヒカルがサンジーフ王国の同席者としてこちらを見つめてきた。だが、もうわしの言うことは決まっている。散々格好をつけても言うことは同じなのだから、潔く言ってやろうと思った。


「それでは、会談を始めましょう...」


「その必要はない。この国と同盟を結んでやる。さらにこの国を私たちの『最重要交流国』として定めてやろう!」


「「...え!?」」


 二人は唖然としていたが、そのうち向こうの王が話し出す。


「まだその話題について話し出してもいないのに、良いんですか?」


「もちろん。わしはお前の有望性とこの国の繁栄のためならいくらでも支援してやるつもりだ!わしはお前の国を見て、非常に感服したのだよ。」


 わしの言うこと、言いたいことは全て言った。あとは彼らが承認するかどうかだ...


「...わかりました!じゃあ今ここに同盟を結びましょう!」


「よしきた!ではこの同盟を『サンジーフ・オルネジア二国同盟』とし、お互いの国の永久なる繁栄と平和を築くものとしよう!」


 私達はサインを書き、熱い握手を交わし同盟を結んだ。これは我が国にとっても大きな進歩になるような気がした。


「あの、いい表情をしているところ悪いのですが、まだ話したいことが...」


「ああ、すまない。」


 わしはすっかり忘れていた。王としては少しみっともない。それは文化の話だった。我が国の文化は他国を凌駕するほどすごいものだと今までは思っていた。だがこの国はどうだろうか、どうやら文明の発達により我が国よりも良いものを仕入れているではないか。貿易の話も取り付け、この細かなガラス細工初め、たくさんのものを高く買い取ることを約束した。


 我が祖先もある国の転生者であることは知っている。だがそれがあまりにも昔過ぎて、新しいものに代々王は飢えていたのだ。他の新しい文明を持つ国は国交を結んでくれないどころか相手にすらしてくれなかった。だがわしはこの最新の文明を持っていると思われる国の初めての同盟の相手になれたのだ。これからは他の国よりも強くなれる。お互いに。


—-----------


 今日は記念の晩餐会を開く予定らしいので、喜んで参加した。もちろん部下や護衛も含めて。


「王、我らも参加してよろしいのですね。」


「ああ、良いんだ。楽しんでくれ。」


 王の「乾杯」の声とグラスの音が響いた。次々と料理が並んできた。色々な食べ物が次々と運ばれてくる。魚を生で食べるというのは聞いたことがない、「寿司」というらしい。なるほど、興味深い。この「ラーメン」というのは、護衛たちに大人気だった。貴重な塩分補給を美味しく出来ると言うことらしい。近々人と金が集まったらもっと「ラーメン」を気軽に食べれる保存食品をつくり、増産するというので、資金援助をすることも約束した。


 だが1つ気になるのは、その料理はほとんど王の手によって運ばれるということ。


「どうして王がいちいち運ぶ?料理人は雇っていないのか?」


「ええ、あいにく雇うお金がなくて...実は30億Gも国として借金をしてしまったのです...」


 わしは内心びっくりした。30億Gとは、我が国の予算の3分の1に当たる。そこまでしてこの国を作りたかったのかと思うと、ここの王は決意する力がすごいと思った。


「では、これはどうかな?わしは君の国を宣伝して、国民を増やすのに貢献する。商人にも紹介してやろう。それは経済が回り、借金全額返済の希望となるだろう。その代わり君たちには、ここの食べ物を我が国の貴族や大商人などに振る舞ってほしい。」


「え、私はそんなことでいいんですか?」


「『そんなこと』だから良いのだよ。君は良い意味で独特なセンスを持っていて、これは我が国に必要だ。急で悪いが、頼めるか?」


「...わかりました。準備しておきましょう。」


 わしは本当に嬉しかった。なんにしろ、ここの食べ物を他の人と共有できるのだから。わしは引き続き料理を嗜んでいた。だが、明らかに見たことがない奇妙な料理を見つけた。


「そう言えば、このにゅるるとした太い麺のような料理はなんだ?どうやって食べれば良いのだ?」


「それは、うどんといって、小麦粉などで作った麺料理のことです。この2本の棒でからめとって、この汁につけて食べてください。」


「俺はとってもうまいと思うぜ!」


「おい、この方はオルネジア王国の王だぞ。バレットでももう少し丁寧にならなきゃいけないことくらい分かるだろ!」


「まあまあ、あまり気にするでない。さてと...」


 少し奇妙だが、一口食べてみると、とても美味しかった。ツルツルとしたのどごし、そしてしっかり噛むことが出来る弾力。この「天ぷら」とか言うのもサクサクとしていてなおかつ、中の具材の質が良い。このような状態を「箸が止まらない」と言うらしい。わしは1つ、良い言葉を知った。


「このうどんの汁に天ぷらをつけるのも良いなぁ」


「おお、さすが我が王の言ったとおり、この天ぷらに程よく合いますね。」


「お言葉ですが、私はこれには塩派です...」


 部下が色々言っているが、わしはどっちで食べても好きだ。なんにしろ、こんなものが毎日食べれるのは良い。わしも毎日食べたいなぁ...そうだ。


「シュウヤ殿、今度はわしと王宮の料理人にこれらの作り方を教えるということも追加で頼めないか?」


「はい!喜んで!」


 あっという間に時間は過ぎていった。いつの間にかお互いは国の王同士の関係を通り越して、親友になっていた。


—-------


「今日はありがとう。では、また来るよ。君も好きなときにいつでも遊びに来るが良い!最大限もてなしてやろう」


 わしは部下を引き連れて国に戻っていった。今日は本当に良い日になった。


「王、なんか瓶に入ったお土産までもらいましたね。」


「お、酒らしいからあとで飲んでみよう。」


 わしは文化を教えてもらうのが楽しみでしょうがない。あとあの料理がもうすぐいつでも食えると思うと、夜も眠れないかもしれない。


「まったくヒカルは、良い国に住んでいるのぉ。嫉妬してしまうぞぉ」

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