【速報】次回配信日、決定【鍬使いのドラゴンスレイヤー】








 ――『鍬使いのドラゴンスレイヤー』が、配信予定枠を取った。

 この情報は、瞬く間にダンジョン配信界隈に伝播していく。数分と経たずにスレが立てられ、情報が共有された。皆が皆、待ってましたと言わんばかりの様相である。

 しかしながら、この数日の休みは何だったのか。

 そのことについて、様々な憶測が飛び交っていた。



『やっぱり詐欺動画で、新しいのを撮影していたとか?』

『その可能性もあるだろうな』

『信じたくはないけど、その説に心が揺らぐ俺もいる』



 まず第一に飛び出したのは、ドラゴン討伐がフェイクである、というもの。

 こちらは『コメントをまったく拾わなかった』というのが根拠の主張であった。だがそれに反論する者も多く、配信初心者である、という前提を考えるべきだという者もいる。

 そんな中で、一石を投じたのはこの書き込みだった。



『単純に、怪我してたんじゃね?』



 それは極めて普通で、何も考えていないような内容。

 しかし、その可能性を思い出した住人たちは一気に色めき立った。



『前回の配信がいまから九日前だけど、あり得るのか?』

『ていうか、考えてみたら怪我しない方がおかしいだろ』

『俺は知ってた。お前らを試してたんだよ』

『嘘乙』



 そして、中にはこのように意見する者も現れる。



『高温の鍬を手に戦闘を行った場合、スレイヤー(仮)は手に軽度の火傷を負った可能性も捨てきれない。レベル1であれば治るまで、遅くとも一週間~二週間の期間が必要になる。少しばかり無理をしようと考えれば、九日という期間は妥当ではないか』

『このスレには皮膚科医がいるのか』

『ぐう有能』



 それに加え、このように推察する者も出てきた。



『単純に装備を整えにいったのではないか。前回の戦闘は勝ったと言えど、どう考えても初心者のそれだったし、身体を守る装備も不十分だった。先ほどの医者の説が本当であるなら、これ以上の身体的負担は負いたくないと考えるのが普通だろう』

『それはそう』

『ちなみに、さっきのはコピペや』

『医者じゃなくて草』



 などと、各々に好きな推論が飛び交う状況になっていく。

 しかしこの場にいる誰もが、同じ思いだった。



 そう、彼らは待ち望んでいるのだ。




「(配信、はよ……!)」――と。




 謎に上がり続けるハードル。

 そんなことを達治と涼子は当然、知る由もなかった。



 

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