ネットゴースト

ボウガ

第1話

 近未来。現実の肉体から離れ、ネットで意識をプログラム化して、自由に移動する人間たちが生まれた。その中に、”彼”はいた。敏腕ゴシップ記者だ。といってもネットで自由にやっているだけ。芸能人のうわさ話、不倫、スキャンダル。

 彼はすでに肉体が朽ち果てていた。AIで補強された"自我"しかない。だが超一流のゴーストであり、彼のつくったネットページは多くの人間に信頼され、多くの人々が楽しみ溜飲をながした。


 彼は人の不幸が大好きだった。どんな小さなタレントや、タレント崩れでもスキャンダルは晒し、ネットの人間たちと叩いたり、悪口をいったりするのが大好きだった。いわゆるその業界のカリスマ的存在。彼はいつでもこういっていた。

「多くのものに笑われるために彼らは調子にのり、失敗する、これは祭りなのだ……その結果彼らがどんな不利益をこうむろうと、彼らは"有名"になれたのだ」


 彼には恋人がいた。誰よりもゴシップ記事を愛し、自らも噂話の絶えない謎に満ちた女、本当に彼女が彼の恋人なのかも怪しいほどに怪しい関係だった。

 ある時女に別れを告げられる。

「どうして」

「皆が噂しているわ、不倫や噂、ゴシップ記事ばかりとりあげられて妻と娘ににげられてネットの引きこもりになり、ついにゴーストになった記者って」

「……」

「私、実はまだ肉体があるのよ、それにね……ゴシップ記事は好きだけど、それにゴシップにさらされる人間は信用できないの、ばいばい」

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ネットゴースト ボウガ @yumieimaru

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