やればできるたてこもり

グカルチ

第1話

「おい、おまえ、諦めるな!!」

「もうだめだ、俺の人生」

「ダメだと思うなら、なぜ、別の事にやる気を出さない」

「すでに考えたさ、あらゆる方法、四六時中な、もう何でもいいから早く金と逃走用の車を用意しろ、警察はまだか!」

 ある二人が、言い合いをしている。一人は廃墟に立てこもり、人質をとっている。立てこもっている男はニットを被りも、人質も麻袋をかぶせられ顏を見えないが。彼に呼びかけているのはうだつの上がらない、ピンとこない平凡かそれ以下の風貌の男。

「俺には、もう守りたいものも何もない、無敵の人だ!!」

「諦めるな!!!俺が相談にのるから」

「諦めるも何も現実がそうだってんだよ!!お前の相談も聞き飽きた!!俺にはもう何もない、だから俺に何をいっても無駄だ、一時面白きゃいい、殺人だろうが強盗だろうが、ともかく金と暴力だ、それだけが俺の救いなんだ!!」

「そんな体たらく、誰が望んだ、俺たちは親友じゃないか」

「!?親友……」

「何だ?」

「親友は俺にいいアイデアをくれた、当人の意識してという事ではない、無意識に彼は俺と話を……お前こんな話をしっているか?」

「ん?」

「人間の意識なんてものは存在せず俺たちは無意識に意識を決定しているという話だ、あらゆる昨今の研究がその可能性を示している、そうだ、最近友人にあっていないし、眠る事もない、それらはもともと俺にいいアイデアをもたらしてくれた"霊長類の楽園"あの大作もそれで書き上げた」

「おいちょっとまって、おまえは小説家のティル・アンダーソンか?」

「そうだ、お前は?」

「俺はただのファンだ女の悲鳴が聞こえて車を止めて立ち寄っただけさ、ガソリンスタンドをさがしていてな……」

 外から呼びかけている男は、ふと中の男にやさしく投げかけた。

「なあ、あんたの作品はいいじゃないか、うれたし印税も入っているだろう、何が不満だ?」

「おれは、止まれないいきものなんだ、動き出したら動き続けなければならない、なのにやる気が、やる気がでないんだ」

「やる気ならでてんじゃないのか?もうここまでの事を成し遂げた、それに友人や夢の事を思い出した、刑務所でなら、何かいいアイデアがかけるかもしれない、ここで絶望する事はないだろう?」

 女が悲鳴をあげた。やけに、図太い声で。

「い゛や゛ゃぁーー」

「いやあ、ってなんで、俺だってお前のことが別に好きなわけじゃないし、何もしないからおとなしく……」

 ふと女にかぶせてある麻布がずれて女が顔を出した。すると男はいった。

「悪夢だ……」

「何をいっている?」

「悪夢だああ……親友の顔をした女がここにいる!!」

 そして男は急いで建物を出てきた、女をおいて。アサルトライフフルをもちだし、空にむかって乱射している、外から呼びかけた男が建物の影に隠れた。

「おい!!やめろ、どうしたってんだ」

「俺は気づいた!!この世の真理に!!さっきまでようやくいいアイデアをおもいついたのに!!これじゃ俺は、どうにもならねえ、俺は、お前たちもこのまま死滅するんだ。

「うわあああああ、あいつのために、今できることは!!1」


 男が銃を乱射し、その弾は女と外の男にあたった、警察がきたが時すでに遅し。警察につかまりニットをかぶっていた男の顔があきらかになる、そして男は人質と外にいた男の顔を見る。誰もが皆同じ顔だった、後から来た警察も……。


「はっ……」

 ある男が目を覚ます。こちらも平凡な顔だが、夢の中の顔とは違っていた。だが男が突っ伏して寝ていた机の上にはその男と映っている写真がある。

「はあ、やつがなくなって、ずいぶん眠りが浅くなった……やつがいないからやる気はでねえし……やる気は出たけど何の夢みたかわすれちまった」

 その写真の左隣には、二人でかいて大ヒットした本"霊長類の楽園"が飾られていた。

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やればできるたてこもり グカルチ @yumieimaru

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