20ページ目.染みるんです。
体育の時間。
わたしの今日の授業は、体育館でバレーボールだった。
体育の授業中、わたしは上に赤いジャージを着ているので、その下の体操服は見えない。
だから、いまわたしがジャージの下に、
先輩はライバー部で、ダンスの練習をしてるそうだから、きっと運動神経も良いのだろうな。
翻ってわたしは、インドア派で部屋に篭って絵ばかり描いているから、運動神経ははっきり言って良くない。
今日もなるべく自らボールに触れに行くような真似は避けた。
しかもより一層今日は省エネで過ごすように気をつける。
いまわたしが着ているのは先輩の体操服。
わたしの汗の臭いを染みつけたくなかったからだ。
自分が考えた事とはいえ、なぜこんな恥ずかしいことを実行しているのだろうと、心の中のもう一人のわたしは呆れていた。
笑いながら元気にボールをやりとりするクラスメイトの中で、ほとんど動かないわたしは、やっぱり浮いているだろう。
でも激しく動くわけにはいかない。
まだゴールデンウィーク前だというのに、体育館内の気温はすでにそれなりの暑さだった。
動かなくても、やっぱりわたしの体にも多少は汗が流れる。
でも暑いからといってジャージは脱げないし……。
時間とともに先輩の体操服に、わたしの体から滲み出る微かな汗が染みてゆく。
わたしの身体が、洗い立ての先輩の体操服を、徐々に汚してゆく。
そのことが気がかりでわたしは授業中、ほぼ上の空。
バレーボールをやってることすら、忘れるほど。
ただおかげで自分が作ったキャラクターの気持ち、よくわかった気がする。
作品にリアリティは出せそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます