14ページ目.対比しちゃうぞ
今どきの多くの女の子が憧れる、人気ライバー、
しかもわたしは知り合ったばかりの流行りからはずれた陰キャ民。
これって先輩のファンの子で、わたしのような経験する人って、けっこういるのかな?
いないのなら、きっとわたしは嫉妬の対象になるのかもしれない。
周りから妬まれるの、嫌だな。
揉め事とかトラブルとかなく、静かに学生生活を送りたいのに。
駅へ向かう周りの人を見ると、やっぱりみんなわたしと先輩の方を見ている。
わたしは急激に目立つ存在となっていた。
「それでさー、今日ダンスの練習なのに制汗スプレー持ってくの忘れちゃってさー。女子なのにヤバくない?」
阿舞野先輩は、わたしの心配をよそに、ふつうに話しかけてきた。
「そっ、そうなんですか。わたし、漫画部なので汗をかくことってないので、運動も苦手だし制汗剤とか持ち歩いてなくて……」
と言いながらも、わたしの手のひらは緊張の汗で湿っていた。
「そっかー。ライバー部の子にデオドラント借りるの忘れたから、ふわりちゃんが持ってたら借りようと思ったのにー」
そう言って阿舞野先輩は笑った。
わたしは先輩のお役に立てなかったようだ。
緊張で硬くなってる体をロボットのようにぎこちなく動かしながら、先輩と駅に着いた。
陰と陽、光と陰、人気と地味、この正反対の女子同士の組み合わせってやっぱり異様なのかもしれない。
駅のホームでもやっぱりチラチラとわたし達を気にする周囲の視線を感じる。
こういう心理状態のときの電車が来るまでの時間って、とても長く感じるんだよね。
身を硬くして縮こまったわたしと違い、阿舞野先輩は鞄を肩にかけてかっこいいポーズを自然に取って立っていた。
この対比、やっぱりわたしには辛い。
それでもやがて電車は来てくれて、先輩と二人で乗り込んだ。
この時間帯は、仕事終わりの人と部活終わりの学生で車内が混む。
「超混んでるし! もうちょっと奥行こ」
そう言って先輩はわたしの腕を掴んだ。
華奢なわたしはよろめく。
先輩の誘導で、二人で車両の奥の方へと詰めた。
先輩はモデルをやるだけあって、女子の中では背は高い方。
対してわたしは低い方。
見下ろせば先輩にわたしの髪質とかも簡単にチェックされるだろう。
それほど先輩と近い距離にわたしがいる。
校内の人気者の先輩と、陰キャの新入生が、こんなにも急速に距離を縮めるなんて、どんな予言者でも見通せなかったんじゃないかな。
わたしの家の最寄りへと走る電車。
車内が揺れる度、先輩の体とわたしの体が触れ合った。
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