12ページ目.せんぱいのお時間
まさか同級生より学校の先輩と一緒に帰ることになるとは思わなかった。
しかも、その先輩は人気ライバーとして学校……いや、それどころか全国的に有名な人。
何を話して良いかわからないわたしは、陰鬱な前髪をさらに下ろすように下を向いて、先輩の隣を恐縮しながら歩いていた。
当然、先輩は名の知れた人なので、途中ですれ違う女子から「きゃー、
そんなすごい人の隣で、こそこそと身を隠すように歩くわたし。
きっと周りの女の子達からは「なに? あの阿舞野先輩に相応しくない暗い子」とか「先輩の隣を歩いてる図々しい子、誰?」って、思われているに違いない。
「そう言えばさ!」
押し黙って歩いているわたしに先輩から話しかけてきた。
「あ、はい!」
反射的に顔を上げて返事をする。
「ふわりちゃん、アタシに絵を教えてくれるって言ってたじゃん? あれ、いつにする?」
そう言えば、確かに教える約束をしたっけ。
先輩は本気だったんだ。
でもいつにするって言われても、わたしは年中暇だし、先輩の方が忙しそうだし、それに優柔不断なわたしが相手を差し置いて決定できるわけがない。
「あ、あの、わたしはいつでもいいですから、先輩の都合の良い日に……」
わたしはお決まりの返事をする。
「そうなんだ。頼んでおきながらなんだけど、アタシ、配信とか撮影とかで時間空いてないんだよねー」
「はぁ、そうなんですか。大変ですね……」
先輩はお忙しそうだ。
「今日は珍しく予定無くて、久々にゆっくりできるけどさー。……ってよく考えたら、今日おしえてもらえば良いんじゃね?」
「えっ!?」
「そうだ! いまから絵を教えてよ!?」
「えぇーっ、いまからですか!?」
先輩の唐突な提案に、気弱なわたしは思わず動揺した。
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