13-4 愛のかたち

「頑張ったな、アンリエッタ」

「……うん」


 荒い息だ。健気に俺に抱き着いてはいるが、汗まみれ。きれいな髪が、汗で体に張り付いている。頬には涙の流れた跡がある。


「痛かったか」

「幸せだった。……エヴァンスくんとひとつになれて」


 物憂げに体を起こすと、アンリエッタは俺に口づけしてきた。


「わたくしの人生は、このときのためにあったと感じたの」

「いい子だ」


 抱き寄せると、またキスを与えた。


「これでわたくし……エヴァンスくんの恋人になれたかな」

「前から恋人だよ、アンリエッタ」

「うれしい……」


 寄り添ってきたので、裸の背中を撫でてやった。愛らしい胸が、俺の胸と重なっている。


「ほら……」


 抱いたまま、体を起こしてやった。みんなは、そんな俺とアンリエッタをじっと見ている。


「エヴァンスくん……。先生……感動しました」


 ウエアオウルのソラス先生は、涙を流していた。


「『けっこん』というのは、神聖なものなのですね。ふたりがいたわりあいながら愛し合っているのが、よくわかりましたよ」

「ありがとうございます」


 って俺が礼を言うのもなんかヘンだが、とりあえず頭を下げておいた。見ると、他にも泣いている娘がいる。だいたいは夢見るような瞳で、うっとり俺とアンリエッタを見つめている感じさ。


 もっとも個人的な行為を見られたというのに、なぜか全然恥ずかしくない。おそらく聖地の力が、俺に作用しているのだろう。


「エヴァンスくん……」


 アンリエッタが、俺の胸にほほずりしてきた。


「リアンちゃんとも恋人になってあげて」

「いいのか」

「もちろんよ」


 俺を見上げ、俺の胸にちゅっと口を着けた。


「それがエヴァンスくんの役目でしょ。みんなと聖婚の儀を挙げるのが」

「そうだな……」


 少し離れた寝台に、リアンはちょこんと座っていた。俺が隣に腰を下ろすと、横抱きにしてくる。


「エヴァンス……汗かいてるね」

「気持ち悪いか」

「ううん……」


 リアンは首を振った。


「素敵だよ。たくましいし、『おとこのこ』らしくて」

「そうだな」


 抱き寄せると、くちづけを与えた。瞳を閉じて、リアンは俺のキスに応えている。俺が脱いだ服を胸に抱えて、アンリエッタは横になっている。すうすう寝息が、もう聞こえていた。ああは言っていたが、初めての体験で疲れたのかな。幸せそうな寝顔。少し微笑んでいるように見える。


「怖かったら言えよ、リアン」


 スライムスーツのボタンを上から外していった。


「平気だよ。エヴァンスになら、なにをされてもいいもん」

「お前、いい子だな」

「えへーっ」


 キスしながら、柔らかな胸にアクセスした。くすぐったいとかなんとかリアンはもぞもぞ体を動かしていたが、やがて吐息が熱くなり始めた。喘ぎ声も混じっている。リアンの服を全て脱がせた。と――。


「……なにやってんだよ、バステト」

「あたしか? 決まってんだろ」


 バステトは、自分の服をむしるように脱ぎ始めた。というかもう秒でまっぱだ。


「あたしもエヴァンスの恋人になる。リアンと一緒だよ」

「少し待てよ」

「いいや待てない。……いいだろ、リアン」


 リアンの瞳が、ゆっくり開かれた。


「いいよ。一緒に恋人になろう、バステトちゃん」

「決まりだな」


 がしがし近づいてくると、バステトは俺の頭を胸に抱え込んだ。


「あたしの胸だって、もうエヴァンスのものだ。好きにしてくれ」


 俺の口に押し付けてくる。


「ああ……あたし、なんか変。どんどんエヴァンスが好きになる」


 愛おしげに俺の頭を撫でている。


「頼むエヴァンス。あたしとリアンを愛してくれ……」

「わかったよ。痛くても我慢するんだぞ」

「うん」

「わかった」


 そっと横たえる。ふたりの胸を、俺はかわいがる。静まり返ったヒエロガモスの地に、かわいい喘ぎ声が聞こえ始めた。

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