第273話 唐揚げ作り動画
『蒼唯と!』
『優梨花の!』
『『3分クッキング~(です)』』
『わん!』
「えぇ!」
それは、秀樹が珍しくこはくを連れずにダンジョンに来ていた帰り道、たまたま『ブルーアルケミスト』の特別会員限定で公開されているコンテンツを閲覧している時であった。
このコンテンツは基本的には、ぬいやまっくよのオフショットが掲載されている程度のちょっとしたものであるが、秀樹の愛犬であるこはくが友情出演することもあるため、ちょくちょく閲覧していた。
しかし今回公開されたのは動画。しかもぬいたちの主であり『ブルーアルケミスト』のメインコンテンツを担う蒼唯だけではなく、妻である優梨花にアシスタント役なのかエプロンに三角巾姿の、こはくまで出演していた。
『それでは今回は『レヴィアタンの唐揚げ』を作っていこうと思うです』
『今回唐揚げにしていく部位は、レヴィアタンの生命力に似合わず、急速に鮮度が落ちていってしまうことで有名な部位を使っていきます。ちょうどマグロで言うところのカマトロの部分ですね』
『くぅん!』
『今回は、ぬいたちが討伐後すぐに『時空鞄』に入れてくれたので鮮度の心配は無いです』
『わん!』
「鮮度とかよりレヴィアタン自体にツッコミを、ってレヴィアタンの解体ショーか…限界まで『空間拡張』すると家のキッチンってレヴィアタンがまるごと入るのか。勉強になったなぁ」
各国の探索者たちが総出で『海中の神殿』を探している最中に、現在確認されている水棲モンスター内で最強と評されるレヴィアタン。それを調理する動画をアップする。挑発と取られても仕方がない行為であるが、本人たちに深い意味は無いのだろう。
出来ればこれをアップする前にリリスか、出演している優梨花に止めて欲しかった所であるが、リリスは兎も角、優梨花は突然手に入った超級食材であるレヴィアタンに舞い上がり我を忘れているのだろう。
「凄い。本当に『3分クッキング』の権能には驚かされるよ」
ある程度、蒼唯たちのスケールを熟知している秀樹ですらこれまでの展開に着いていけてないので、これを見ているであろう一般視聴者は更に置いてきぼりだろう。
そんな不安を加速させるように、『空間拡張』された坪家のキッチンに置かれたレヴィアタンの解体ショーは爆速で進んでいく。『3分クッキング』の権能とは言え、クジラほどの体長のレヴィアタンの解体が1分程で完了してしまう様は最早清々しいまであった。
その後もツッコミ所満載な調理動画は続き、
『唐揚げを揚げる際は『地獄の業火』を使うです?』
『いいえ。レヴィアタンは魔素を多く含んでいてちょっと苦味が強めだから『聖なる蒼焔』で浄化しながら揚げるのがおすすめです』
「わん!」
【ポイント レヴィアタンは浄化しながら揚げると苦味が抜ける】
「キッチンに『聖なる蒼焔』常備してる家庭はないでしょ流石に!」
動画へのツッコミも止められない秀樹は動画を見終わる頃にはへとへととなっているのであった。
尚、帰宅した後に食べた『レヴィアタンの唐揚げ』は途轍もなく絶品であった事だけはここに記しておく。
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