第269話 名は体を表す
『天空の城』を攻略し『勇者の信奉者』という称号を手に入れたという話を本人たちから伝えられた蒼唯。
勇者という存在に心当たりが無い沙羅たちは当初困惑した。自分たちが
とは言え、蒼唯のこれまで行いを客観的に見たら勇者的偉業の数々ではあると言えなくもない。取り敢えずは、(可愛いに対して)勇ましい者、略して『勇者』とする事で納得したのであった。
そんな2人より報告された『勇者の信奉者』の効果は、先日『地底の遺跡』を攻略した坪家の御三方が獲得した類似の称号と変わらないものであった
「やっぱり称号の効果はステータス強化らしいです。上昇率が普通のスキルとは比べ物にならないとは言ってたですけど」
【なるほど。…では、称号に示された関係性の強さがそのまま強化率に直結するという考察的に、御二方のファン度が上がれば上がるほど強化率は上がると】
「そうです。私が勇者だと仮定すればですけど」
【そこはもう確定だと思われます。あの駄女神のことてすので】
「ですか」
称号に示された関係性、沙羅たちで言う所の信奉者。これの度合いが高まるほどステータス上昇も高まると蒼唯たちは考えている。
何故蒼唯たちがそう考えているかと言えば、『地底の遺跡』攻略の一報を聞いた蒼唯は、こはくが得た『勇者のペッ友』という称号が気に食わなかったため即日坪家に訪れ、ペッの部分を削除しようと試みた。
普通ならば名称を変更するだけならそこまでの手間ではない。『錬金術』スキルを捨てたばかりの蒼唯であっても大した時間は要らないと考えていた。
しかし称号に触れた瞬間、名称を変更しようとした瞬間理解する。この名称こそこの称号の本質であると。無理に名称を変更しようとするとぐちゃぐちゃになると。
「感覚的な話ですけどペッ友から友に変更した場合、残念ながら残念ながらですけど強化率は下がってたです。ほーーんの少しだけですけど、私よりぬいたちの方がこはくと仲が良いですから」
「ぬいぬい!」
「まく~」
「ほーーーーんの少しです!」
【それでも何とかペッ友の部分を改変したのは流石でしたよ。その結果が『勇者のもふ友』なのはまあ、はい】
示された関係性が強化率に直結するため、名称変更はその称号を一から造り変えるに等しい。その上、ペッを削除した結果強化率が下がるのであれば蒼唯の自己満足にもならない。
しかしペッ友に負けるのは容認できなかった蒼唯は、本質である、
こういった経緯から称号については理解していた蒼唯たちは、沙羅たちが獲得した『勇者の信奉者』に驚くことは無かった。
それよりも問題なのは最後の『試練の迷宮』についてである。
「まあそれはそれで良いです。で、問題は最後の『試練の迷宮』です」
【『海中の神殿』ですね。メティスに聞いているので場所について私たちは既に判っておりますが…普通の探索者たちが探すとなると、いつ発見されるか分かりません。海の中にあるってだけ厄介ですが、『地底の遺跡』並みの認識阻害が施されてますので】
秀樹や優梨花ほどの探索者でも気が付けないほど巧妙に隠蔽されていたダンジョンが、海という探しにくい場所にある。
これを探し出す術が今の探索者業界にあるとは思えないリリス。
「普通に探し出すとなると、広大な海をこはくが犬掻きして探すしかねーです?」
【その探し方のいったいどこら辺に普通らしさがあるのかは疑問ですが…こはく様並みの探知力を持った者がいなければ話にならないのは確かですね。でなければメティスのような裏技を使うしかないかと】
「まあ、取り敢えずは放置です。まだ『地底の遺跡』が攻略されたって話も公表してねーですもんね?」
【はい。実際『天空の城』も『地底の遺跡』も攻略後も残っておりますし、第一報酬の称号は兎も角、スキルや装備品などの報酬は沙羅様方が攻略した後でも獲得可能な事は確認済みですので、しばらくは】
しかも世間的にはまだ2つ残っているという認識なため、取り敢えずは放置しておく方針で行くことになったのであった。
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