第172話 基準に向かない人

【情報収集のために探索者協会を掌握した結果、他の仕事が山ほど増えたのはなぜなのでしょうか】

まくなぜ~」


 今回のダンジョン災害の黒幕を探すべく動いていたリリスは、少し目を離していた隙に主人である蒼唯が暴走した結果、その後始末に追われることとなった。

 その後始末は、研究用ダンジョンを探索者協会が所有し、ダンジョンを研究している様々な機関に広く貸し出す事で終結を向かえる筈であった。

 愚か者たちが、ダンジョンを好き勝手し無いために監視くらいはするつもりであったが、管理は魅了した探索者協会の幹部たちに任せるつもりだった。だったのだが、研究用ダンジョンの御披露目の日に大きめのアクシデントが発生した。


【はぁー、ダンジョン核が緻密な存在であることは分かっていましたが、まさかダンジョン核を操作しようとした協会長の脳を、情報量の多さでパンクされる程とは思いませんでした】

ぬいだねー」

【蒼唯様が悠々と操作していましたので、特に問題ないと思っておりましたが、あの方を基準に考えるべきではありませんでした】

まくそりゃまくそう!」

 

 動作確認は蒼唯とリリスで行っていたため、気が付かなかったが、ダンジョン核を操作するために処理しなければならない情報量は、常人に耐えられるレベルのモノでは無い。

 現に脳がパンクして倒れた協会長は、パフォーマンスを兼ねてダンジョンの大規模な変更をしようとして、それを行うために必要な大量の情報が脳内に雪崩れ込んできて倒れた。

 

 ダンジョンマスターとしてこの世界に顕現したリリスは、自身の手足のようにダンジョン核を扱うことが出来たし、蒼唯たちも扱いに苦戦する様子も無かったため、気が付かなかったが、ダンジョン核はまだまだ人類が扱うには早すぎる代物だったようだ。


 高位の探索者、特に情報処理能力に優れた戦闘職、生産職問わず魔法系のジョブを持つ者たちは辛うじてダンジョンを制御する事が適った事は不幸中の幸いであった。それが無ければ最悪、蒼唯にすら批判が言ってもおかしくない状況であった。

 どうやら魔法系のスキルを扱う感覚とダンジョン核を制御する感覚は似ているらしい。問題としては少しの操作でも脳を酷使してしまい、暫くの間使い物にならなくなってしまう点である。

 

【結局、操作は私がやる他無さそうですね。『縫包もふもふ化』モードで彼処に行けば、蒼唯様のアフターサービス感が出るので、そこはプラスに考えましょう。仕方ありませんし】

ぬいぬいがんばれ

まくまがんば~」

【はい】


 ダンジョン災害の渦中に優秀な探索者たちをそんな贅沢な使い方は出来ない。

 そのためリリス(もふもふモード)が、研究者たちの要望に合わせてダンジョンを制御する運びとなるのであった。

 

 蒼唯の後始末に追われ、思ったように情報収集が上手くいかなかったリリスとは対照的に、まっくよの情報網である猫ネットワークは、予想以上の働きをしていた。

 ダンジョン災害が発生した日の少し前に、奇妙な存在がダンジョンに入って行くのを、ダンジョン付近を縄張りとしている猫集団が目撃していたのだ。


まくまくねこみたまくまたましまくまふたつまっくまくおっきいとまくまくちいさい

【魂を2つ持つ者。大きい魂が『魔王』の魂と考えれば…】

まくまくそこまでまくましらん

【そうですね。ありがとうございます!】


 残念ながら猫集団は、その奇妙な存在を見かけて直ぐに危険を予感し、その土地から退散してしまったため、本当に目撃しただけなため本当に黒幕かどうかも不明であるのだった。


 ただリリスの元にはそんな些細な証言の真偽を確認するアイテムが大量にある。必要なのはそのアイテムを使うための切欠。その切欠を猫たちが届けてくれたのだった。

 早速、リリスはその猫集団の記録を貰うべく向かうのであった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る