第146話 不意の事故

 『悪魔化』の治療も一段落がついた。柊から犯人と目される悪魔は討伐されたとの連絡が届いた。ただ討伐の際に『悪魔の種』がそれなりの量ドロップしてしまったことは、問題視されているようであった。

 この『悪魔の種』が今後一切ドロップしないとは言い切れない現状、市場に出回り悪用される危険性は常に付きまとう。


【なので『悪魔の種』が送られてきたのですね】

「そうです。また『悪魔化』が流行ったときに対応が遅れちゃうと困るですしね」


 そのため『悪魔の種』を研究を依頼された蒼唯。『君も小悪魔にならないかキャンペーン』で『悪魔の種』の身体への作用については大方把握できているので、今は人格面での作用について研究しているのだった。

 それを手伝うリリスに、蒼唯の周りでじゃれつくぬいとまっくよ。完全にいつもの日常てある。

 

「…あ、『小悪魔ポーション』じゃなくて『悪魔ポーション』になっちゃったです。失敗です」

【失敗? 蒼唯様でも失敗することがあるのですね】

「当たり前です。作ろうとしてた効果と違うやつが出来るとかよくあるです」

【なるほど】

「これはどちらかというと調整ミスしたやつですけ

ど。まあ兎も角、失敗作は何かある前に捨てな――」

「ぬい!」

「まく~~、まっ!」


 蒼唯がそう言いながらポーションが入った瓶に蓋をしようとしたときそれは起こった。ぬいがまっくよを投げ飛ばす遊びをしていたのだが、誤って蒼唯の方に飛ばしてしまったのだ。

 まっくよが、蒼唯が座っていた椅子にぶつかる。椅子は大きく揺れ、蒼唯も体勢を崩してしまう床に倒れてしまう。その際、持っていた『悪魔ポーション』が蒼唯に降り注ぐ。


【だ、大丈夫ですか蒼唯様?】

「ぬ、ぬい」

「まく~」


 心配そうに駆け寄った3人は、倒れた蒼唯を覗き込む。すると


「問題ない。気にするな。ただ次回からは私が作業している近くでじゃれつかないでくれ」

【あ、蒼唯様?】

「ぬい?」

「まく?」


 いつもは、ほんわかとした口調の蒼唯はいなかった。雰囲気も全く異なっており、その激変具合に3人は驚いてしまう。


「うん? ああ、ビックリさせたか? ポーションの影響でいつもとは色々と変化しているようだ」

【『悪魔ポーション』って話でしたが、今蒼唯様は『悪魔化』しているということでしょうか】

「性格だけな。詳しい変化は私も分からんが」

【そ、そうですか】

「まあ失敗作だ。効果は今日1日も保たないだろうから安心してくれ」


 リリスのとても不安そうな表情を見て気遣う蒼唯。そういった優しいところは変わっていないことにリリスは安堵する。

 いつもは蒼唯が暴走しても保護者的な目線からブレーキ役を担うリリスだが、クールな大人の女性然とした蒼唯相手では、いつもの調子が出そうにない。

 

 そんな会話をしている横で、ぬいとまっくよのプチ喧嘩が勃発する。


「ぬいぬい!」

「まく~? まくまく!」

【ぬい様、まっくよ様。一応蒼唯様は無事なのですから、喧嘩はおやめください】


 いつもならリリスの一声で止まるのだが、蒼唯の変化に相当動揺しているのか、リリスの声は2匹には届かない。

 そんな2匹の様子を見ていた蒼唯はゆっくりと立ち上がり、作業台に置かれていた本日のまっくよのお菓子である『幻想金属オリハルコン』を手に取り魔力を込める。そしてその瞬間、

 

「まあ、落ち着け」

「まっ!」

「ぬい?」


 ぬいとまっくよは見えない何かに拘束されたかの如く動けなくなる。


【『幻想金属』を極小の紐状に変化させ、それを操り拘束ですか。私は兎も角、ぬい様とまっくよ様すら感知出来ないほどの速さで?】

「そう驚くような技術でもない。それにぬいたちも、興奮していなければ拘束される前に気がついただろうし、そもそもぬいたちに『幻想金属』の拘束は効かないからな」

「ぬい!」

「まく~」


 そう言葉の通り、ぬいは力ずくで、まっくよは『変幻自在』を使い拘束から逃れる。とはいえ非戦闘職であり、それに類する行為をこれまで全くしていない蒼唯が、最強クラスの強さを誇るぬいたちを不意打ちとは言え、拘束したと言うのは驚くべき事だ。


 自由になったぬいたちは、一度捕まって冷静になったのか再度喧嘩を始める様子はない。


「直ぐにいつもの私になる。それに魂が繋がっているお前たちなら私が私であることは変わらないと分かるだろう? 落ち着け」

「ぬい、ぬいぬい!」

「まくまく~」


 蒼唯の一言で完全に冷静さを取り戻したぬいたちは、蒼唯に駆け寄り各々謝罪する。

 そんな光景から完全に取り残されたリリスは、別の事をかんがえているのであった。


【『悪魔化』というか『大人化』していませんか?】






☆☆☆☆☆


語尾消失蒼唯が受け入れられるか不安

一発ネタにしようか続きを書こうか思案中


 


 

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