第121話 サービス終了
『転職の神殿』において『転職の間』が解放された。突然の事態に混乱する探索者たちであったが、『商会連合』のトップである柊が、多くの者が元凶だと推察した某錬金術師に聞いたところ、攻略し、安全も確認済みであることを確認したとの発表があったことで、混乱は終息した。
柊:「でも何で突然、攻略することにしたんだ?」
蒼唯:「うーん、強いていうなら飽きたからです。あと餅は餅屋に任せるのが一番だと思ったです」
柊:「なるほどね。安全は確認したって話だけどどうやって確認したの?」
蒼唯:「どうやってって普通にですよ。それに神罰だーって喰らわせてきたのが『無職』な時点で安全だと思うですけど?」
柊:「まあアオっちにしてみればそうかもだけどな。まあいいぜ。探索者たるもの安全かどうかは自分で判断すべきだからな」
蒼唯とのメッセージを終えた柊は考えた末、蒼唯の発言を少し脚色して世間には発表した。
蒼唯たちがダンジョンブレイクを起こした後のダンジョンは、人類に友好的になる傾向にあることは、柊も承知している。
彼は、少し前ま、ダンジョンブレイクを起こすことで、蒼唯たちがダンジョンを掌握し、それによりダンジョンを思うがままに操っているのではと考えていた。しかし
「人類に都合の良いダンジョン。蒼唯がダンジョンを掌握してるなら、蒼唯がダンジョンには詳しい理由もわかるが…それを隠す理由が分からんな」
普通の探索者ならば自分だけが知り得た秘密を公開しないのは当たり前である。自分たちがどれだけうまい汁を吸えるか考えるだろう。しかしこと蒼唯に関しては違う。探索者業界に興味がなく、またその性格からしても利益独占を思い付きもしない善良な子なのだ。
放っておいたらどこの詐欺師に良いように使われるか分からないような子なのである。
「まあアオっちが言わないなら、その方が良いことなんだろう。下手に追求してみると、知りたくない世界の真相とかを常識でしょみたいなテンションで教えられるしな」
ただ詐欺師程度に扱いきれる器ではないため、詐欺師が振り回されるのがオチであることは、利益目的で近づいたら、振り回され続け、いまや蒼唯の仲介役として世間に認知され出した柊が一番理解していることである。
―――――――――――――――
人類に都合の良いダンジョンの代表例とすれば、リリスがダンジョンマスターを勤める『吉夢の国』である。ダンジョンは探索者から搾り取った魔力によって維持している。より効率的な方法としてモンスターをけしかけ戦闘により魔力を使わせたりする。
しかし人類に都合の良いダンジョンは探索者の数は多くても、効率的な方法を取らないため、経営が難しい部分がある。
【魔力を多く消費する『転職の神殿』は厳しい、ですか】
「ですです。探索者が『転職の神殿』にいることで得られる魔力と、転職させるのに必要な魔力が釣り合わなくて、転職させればさせるほど赤字らしいです」
『吉夢の国』はアトラクションの稼働くらいしか魔力を使わなく、幾つかのアトラクションでは疑似戦闘等を行わせるなど搾り取れる場所で搾り取っているため、やっていけるが、『転職の神殿』では魔力は不足していく一方である。
そのため転職に来た者の才能を魔力の補填代わりにしていたのだ。ただその問題は蒼唯の助力で何とかなる。
【蒼唯様より頂いた『魔力炉』を使えばそれくらいはどうにかなるのでは?】
「そうですね。本格的に運用しなければ分からんらしいですが、多分大丈夫だと思うです。最悪数を増やせば解決です」
【ではなぜ、
「ダンジョン核に組み込まれた転職の権能だと、避けられないそうです」
クルートを心酔させたお陰もあり、ダンジョンの維持のため無駄に才能を中抜きされる心配は無くなったが、ジョブシステムが不要な才能を削り必要な才能に上乗せすることでの運用を想定しているため、転職時の
【逆に蒼唯様の転職は殆ど
「そんなこと無いです。私も、素材や触媒、魂や身体に刻み込まれた経験の残滓とか色々と消費してるです。無から有は造り出せないものなんです」
【経験の残滓とは要するに、身に付かなかった経験などですか?】
「そうですね。魂や身体にこびり付いて、身体の動きやスキルの発動を阻害するノイズが主ですね」
【つまり魂や身体のデトックスついでに、ジョブを強化していると。比較にすらならないではありませんか】
「そうです? まあ私の方はオーダーメイドでやってるですからね」
直接、間接の差があるとしても限度があるだろうと感じるリリスであった。
【『転職の神殿』を攻略しない方が人類にとっては有益だったかも知れませんね】
「もう探索者の相手は飽きたですよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます