第100話 教えてサタン茸
ダンジョンに初めて入場した者に授けられるジョブ。これまでジョブは不変のモノであった。しかし『転職の神殿』の入り口に設置された石碑を呼んだ探索者たちはジョブの変更が可能であると考えたらしい。
今日、学校で輝夜から聞いた話をリリスたちに話す蒼唯。
「それに『上級ジョブ』? とかいうのに昇格できるかもって浮かれてたです」
「ぬいー」
「まく~」
【なるほど。『転職の神殿』ですか。私が元々いた世界にもそういったシステムを人族は使っていましたね。『魔界』でも一目置かれていたシステムでしたね】
「確かにダンジョン入っただけでジョブとスキルを得られるってよく考えると破格ですよね」
ジョブの仕組みについては、ほとんど解析が進んでいない。おそらく肉体的な素養により授けられるジョブが決まるのだろう。そのため生産ジョブを得たかった者が戦闘系ジョブを授かり探索者を諦める等といった自体も普通に起こり得る。
しかし『転職の神殿』をクリアすることで『転職の間』が解放され、好きなようにジョブを変更出きるとすれば、ある程度自身で決めた進路を進めることになるだろう。
【しかし...蒼唯様がダンジョンに行かれるのですか?】
「行く気は毛頭無いです。ただ『転職の神殿』というかジョブには興味が湧いただけです。リリスは一応ダンジョンマスターですし詳しいんじゃないかなと思ったですが」
【一応...すみませんが、ダンジョン核に組み込まれたジョブのシステムについて詳しいことは分かりませんし、元の世界の『転職の神殿』についてもそこまで詳しい訳ではありません。ただ】
「なんです?」
【『転職の神殿』について詳しい者になら心当たりがあります。一応『転職』やジョブについても詳しい筈です】
「そうなんですか。どんな人です? どこかのダンジョンマスターです? なら会うのは難しいですね」
最近はほとんど蒼唯の家の家政婦状態であるリリスを見ているためそうは思えないが、ダンジョンマスターはあまりダンジョンから離れられない。それはダンジョンに何かあった際、ダンジョン外に居ると出来る事が限られてしまうためである。
リリスが例外なのは、リリスのダンジョン『吉夢の国』自体が夢空間であり、『夢魔姫』のリリスは何処に居ても即座にダンジョンに帰還でき、ダンジョン核を通さずとも多少は干渉が可能であるためなのだ。決してダンジョンを放ってのほほんとしている訳ではない。
【いえ、一応呼び出す事は可能です】
「そうなんです? なら話を聞いてみたいです」
「それではお願いします。ぬい様」
「ぬいー?」
突然話を振られたぬいは、理解していない顔でリリスを見つめるのであった。
―――――――――――――――
庭に移動した蒼唯たちは、ぬいの召喚を見守っていた。
「ぬいーぬいー!」
「まく~」
「召喚というか何というかです」
【まあそうですが。あ、生えてきました。サタンの分霊です】
リリスが心当たりがあると言った者は、『エデンの園』のダンジョンマスターであるサタンであった。
リリスの話ではかつて、人族と魔族が争っていた際、人族の戦力を削ぎつつ魔族が新たな強さを得る目的で『転職の神殿』を襲い、そのシステムを奪おうとしたのがこのサタンであったらしい。
「蛇型の茸の姿で召喚されるとは、伊達に茸を頭の上に生やしてないですね」
【それは、ぬい様が生やしたモノですよ】
【何だここは...っとそこにいるのは淫魔! また貴様の差し金か!】
【確かに今回は私の差し金だけれど、少し落ち着いてちょうだい。でなければ...】
「ぬい!」
【う、ぐ...はぁー、分かった。話を聞かせて貰う】
悪魔召喚ならぬ茸召喚させられたサタンは、『茸師』のぬいに逆らえない。そのため素直に要求に従う他無いのである。
蒼唯たちからジョブについて質問を受けたサタンは、ジョブについて簡潔に答えた。
【ジョブシステムは、肉体的にも魔法の素養的にも他の種族に劣る人族に授けられた救済だが、実際そんな良い物じゃない。プライドの無い人族だから成立するシステムだ】
「というとです?」
【数多の才能を犠牲にすることで、1つの才能に特化させるシステム。それがジョブだ。『剣士』が魔法が使えなくなるようにな】
【なるほど。確かに自分自身の力にプライドがある魔族や他の亜人種は好まないシステムね】
【特に酷いのは生産系ジョブと括られてた奴らだ。魔族なら『錬金術師』などの魔力の扱いに優れた者は高位の『魔法使い』に比肩するが、このシステムだと戦闘の才を犠牲にしてやがるからな。まあ雑魚な魔族を多少マシにすることが出来そうなシステムだったから、多少研究したが、結局、もっと良い『
何となくだが、ジョブシステムについて理解する一行。
【で、『転職の神殿』だったか? あれは人族にしては面白い発想だった。ジョブシステムで特化させ育てた才能を犠牲に別のジョブに移ることで、より特化した才能を持たせてるからな。神殿を奪ってやった時とは、人族たちを騙して育てた才能をそっくりそのまま配下に与えてやったんだがな。直ぐにバレたが】
「もし今回の『転職の神殿』のダンジョンマスターが同じ発想ならヤバイです?」
【さぁな? だがこっちの連中がジョブシステムに無知なら、それをやってもバレなそうだな】
何となく話が聞ければと思っていただけたが、かなり有益な情報であった。特にサタンが多祥なりともしていた、ジョブシステムの研究内容も手に入った。蒼唯は満足するのだった。
「よし、聞きたいのはこれくらいです。もういいですよ」
【偉そうな奴らだな。まあいい。そろそろ、戻らせて...っておい、犬っころ。何をす、】
「ぬい!」
「よく我慢したです。美味しいですか?」
「ぬい!」
【いきなり茸として召喚されて、最後は食べられるとは、哀れねサタン】
☆☆☆☆☆
記念すべき百話目がこれとは
まあこの作品らしいと言えばらしいのでしょうか?
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