第58話 夢喰い
『悪夢の国』には5つのエリアが存在し、それぞれにミッションが設定されている。基本的にミッションをクリアすれば良いため、モンスターを倒して進むダンジョンとはまた違う攻略方法が必要となる。
まっくよたちが一番最初に訪れたエリアは『
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しかしそんな攻略法は選ばない2匹。正攻法で討伐していく。『夢の羊』はこの『悪夢の国』では強い。『
しかし相性が悪い。羊の夢を黒く塗り潰す『小常闇』により、『夢の羊』が創り出した夢は即座に消滅していく。これがまだ頭の切れる者であれば対応策も考えたかも知れないが、『夢の羊』にはそれだけの頭脳がない。そのため次々に『食トレ』の餌食となるのだった。
『夢創』を持つ羊を大量に食べたまっくよとぬい。ぬいは、あまりこのダンジョンに関心が無いため『食トレ』による強化は起こらなかった。
しかし、まっくよは今回の一連の騒動に思うことがあったため、その思いが強化を引き起こす。
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ミッションをクリアして『草原地帯』をクリアした2匹には、次のエリアに向かう道が示される。しかしまっくよは、それを無視し『食トレ』によって習得したスキルを発動させる。
スキル『
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夢が形となった『悪夢の国』は『夢喰い』によって、夢の中から出られなくなる牢獄から、ご馳走に変貌する。
まっくよは、今回の件で自身が与える睡眠に夢は不要と断じたのだった。
『悪夢の国』がどんどんと喰われていく。このままでは、テーマダンジョンとしての機能どころか、ダンジョンとしての存続すら危うくなるだろう。そう思われた時、このダンジョンの主が慌てた様子でまっくよたちの元に現れた。
【ちょ、ちょっと貴方たち! 何してくれてんのよ!】
「
「
【私はここの支配者、『
「
【え、あぁ...ぐぅぅ】
「
「
『悪夢の国』において、『夢喰い』と『小常闇』を持つまっくよに敵うものはいないだろう。それはこのダンジョンの主であっても変わらない。相性が悪すぎるのだ。自分のダンジョンなのにおかしな話だが。
口上の途中で眠らせるのは可哀相だと感じたぬいは、指摘したのだが、食事の邪魔をされて少し不機嫌そうな、
まっくよを見て、それ以上口を出すことはなかった。
―――――――――――――――
『夢魔姫』リリスは目を覚ますと、自分の体が動かせないことに気が付く。疑問に感じたリリスは辺りを見渡すと『悪夢の国』が崩壊寸前まで食い荒らされていた。その光景にダンジョンボスながら恐怖を感じるリリス。
リリス自身が討伐され、ダンジョンが攻略されたとしても時間経過と共にリリスは復活する。しかしそういったダンジョンの機能ごと喰われてしまえばどうなるのだろう。ダンジョンボスとしてあり得ない筈の存在の消滅という危機に身体が震える。
【あ、あの!】
「
【た、食べるのを止めて頂けませんか? 何でもしますから!】
「
リリスの懇願を受けて、ぬいがまっくよを呼ぶ。
「
【食べるのを止めて頂ければ、何でもします。本当です。許して下さい!】
「
「
【え、あの、その...悪夢ではなく吉夢の国にいたします!】
とち狂ったリリスは、訳の分からない事を口走る。言ってしまった瞬間から絶望の表情を浮かべるリリスを無表情で見つめるまっくよ。『悪夢の国』の終焉が決まった。
「
【へ? ほんとうですか?】
「
「分かりました! これからは決して睡眠を妨げるような悪夢は見せません!」
まっくよは自分の睡眠観はしっかり持ってるタイプだが、他の価値観にも寛容である。睡眠で夢を見たい者も要るだろう。そう考えたためリリスの提案を受け入れたのだった。
決して夢を食べ過ぎて飽きたからではない。
こうして人知れずダンジョンの性質は変化することになる。
その後、このダンジョンは世界で唯一探索者以外の者が入って遊ぶことができるダンジョン『吉夢の国』と呼ばれることとなるのだが、それはまだ先の話である。
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