第48話 茸猫
蒼唯とぬいが一緒に帰宅すると、まっくよはぬいが何処に行っていたか察したのか拗ねてしまった。
ぬいが自慢気だったのも悪かった。
「まく~」
「そんな拗ねるなです。ほら、まっくよの好きな『菌ノ庫』ソテーです」
「...まく」
蒼唯に宥められたことで少し機嫌が良くなったまっくよは、『菌ノ庫』ソテーを貪る。
残念ながら蒼唯は『菌ノ庫』を食用として見ることは出来なかったが、ぬいと似た味覚を持つまっくよは、『菌ノ庫』が好物の一つとなっていた。
「まくまく!」
「よく食べるです。でもまっくよは、『菌ノ庫』を好んで食べる割にはぬいが習得した『茸師』は覚えなかったですね。別のスキルは習得してたですけど」
基本的にぬいやまっくよが『食トレ』により習得するスキルは、彼ら自身が望んだ願望が形となるシステムである。ぬいが『菌ノ庫』を蒼唯とまっくよに食べさせたいと思い『茸師』を習得したように。
そのため、まっくよも『菌ノ庫』を食べたいと思い『菌ノ庫』を習得すると思ったのだが、まっくよ的にはぬいが育てた『菌ノ庫』で満足しているのだろう。
「でも私的にはまっくよが『茸猫』を習得してくれて嬉しいです。この前も困ってたら生えてきて助けてくれたですし」
「まくまく!」
まっくよが習得した『茸猫』は、猫胞子でマーキングした相手の元に瞬間移動できるスキルである。胞子を付着させた相手の所に生える茸のように。
これは蒼唯やぬいと、離れたくないという願望の表れなのかもしれない。
ぬいやまっくよと異なり、『ぬいぐるみ少女』こと沙羅の相棒であるベアーくんが習得するスキルは、沙羅の願望を形造ったモノとなる。ベアーくんを大切にしている沙羅の願望からすると、ベアーくんを守るスキルが自然と習得されるだろう。
そこら辺は良し悪しである。
「今度はまっくよも学校来るです?」
「まく~」
今日1日だけでもかなり先生や生徒を困惑させたのを知らずなのか、そんな提案をしてしまう蒼唯であった。
―――――――――――――――
柊が蒼唯のために立ち上げたサイト『ブルーアルケミスト』は、会員制となっている。会員の選別は基本的に柊側が行い、蒼唯が招待した者は無条件で入れる制度となっている。
蒼唯には全く興味が無い事だが、現時点で蒼唯の商品の価値は爆上がり中である。そんな中、蒼唯の商品を買うための権利を持つ人を選べる役割というかなり重要な役職を得た柊。
根っからの商人である柊は、個人的な感情でそれを行使することはないが、柊の機嫌を損ねれば蒼唯の商品を入手する機会も得られなくなるというのは、柊の権力を高めるのには十分であった。
実際、すり寄ってくる者も増えた。そういう性能目当て丸出しの者は会員の条件を満たしていないので無視するのだが。
「...まあこのラインナップ見れば当然だよな。抽選形式とオークション形式にしといて良かったぜ。じゃなきゃ即完地獄が始まるとこだったぜ」
それでも性能目当ての客を完全に排除することは出来ない。協会や政府の推薦等があれば会員にせざるを得ない場合もある。
そのため『ブルーアルケミスト』は資金調達用のオークション形式での購入商品と、蒼唯が望むような客層に優先的に買われるように考えられた抽選形式での購入商品に分けられている。
蒼唯の可愛さ重視の商品であったり、スキルなどが全く付与されていないただのハンドメイド作品などを紹介するページや、デザインの要望案などを投稿するページなど、商品購入ページ以外にも様々なリンクを用意しており、そちらへのアクセス頻度が高いアカウントに優先的に当選するようにシステムを組んでいるのだ。
流石に性能の詳細が書かれているページへのアクセスが多いアカウントには当選しないようにといった操作は行われていないが、性能目当ての客はオークションで競り合う以外で商品を購入しにくくなっていた。
「結局、蒼唯のお気に入りになって受注生産して貰うのが一番だけどな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます