第41話 ぬいのグルメ
ぬいはいつも通り家を出る。しかし今日はいつも行っているダンジョンには向かわない。目的地はこの前、蒼唯とまっくよと一緒に見たニュースに映っていた『菌ノ庫』ダンジョンである。
ぬいは『食トレ』の影響で視覚や嗅覚を使い、食べたら美味しいものを識別する能力が備わっている。テレビ越しに映っていた茸は美味しそうに見えたし、そのダンジョンに近付けば近付くほど、美味しそうな匂いが漂ってくる。
「
唯一の問題は蒼唯から、行かないように言われている点である。まっくよも蒼唯の発言を気にしてか、「まくまく」うるさかったので何日かは様子を見てたが、昨日またニュースに出ており、より美味しそうに見え我慢が利かなくなったのだ。
「...
『菌ノ庫』ダンジョン周辺に到着したぬいは、周りに生えている茸を食べ始める。茸を食べるのは初めてたが、カリカリとして香ばしい。これは『火炎耐性』の味だ。
「
ぬいを見つけて襲い掛かってくる茸系モンスターもいたが、正直相手にならない。腹ごなし感覚でサクッと倒す。
寄生しようと『生気吸い』や『魔力喰らい』の胞子がぬいの身体に付着するが、『ぬいぐるみ』であるぬいには寄生出来ないようで茸まみれにはならない。
周囲の茸を粗方食べ尽くしたぬいは、この場所で一番美味しそうな匂いがする方向に進んでいく。
その先には『菌ノ庫』の特異種が生えていた。視覚的にも食欲がそそられる。早速、かぶり付こうとすると『菌ノ庫』もモンスターとしての意地を見せる。
「のこーーーーー!!」
「
自身の眷属である茸を食い荒らした敵。その敵の情報は餌になった茸たちが集めてくれた。そのため『菌ノ庫』はぬいに対抗できる胞子を生み出せた。この胞子は『ぬいぐるみ』を宿主として繁殖できる。しかし
「
「の、のこ!?」
一瞬で強くなれるのは『菌ノ庫』の特権ではない。散布された胞子を吸い込むぬい。胞子を体内に取り込み『食トレ』を発動する。
ぬいの身体は『菌ノ庫』の『ぬいぐるみ』特化胞子を受け付けない身体へと変化する。胞子という唯一の武器を無効化された『菌ノ庫』は餌へと成り下がる。
「
『菌ノ庫』をたらふく食べ終えたぬいは、これを蒼唯やまっくよにも食べさせて上げたいと考えた。このぬいの思いに『食トレ』が応える。
ぬいは新たに『
「
ぬいは『菌ノ庫』が最後にばら蒔いた胞子がにょきにょきと生えてくる。新たな『菌ノ庫』たちである。成長を重ねた先程の『菌ノ庫』より熟していないが、こいつらもそこそこ美味しそうである。
しかし食欲をぐっと我慢したぬいは、『菌ノ庫』たちを回収するのだった。
回収を終えたぬいはさっさと帰って『菌ノ庫』の移植作業をしたかった。しかしそこでふと思い出す。蒼唯がここは危険だから近付くなと言っていた理由は茸だということを。
「
そのため『茸師』を発動し、この周辺に生えている茸たちは消滅し、充満していた胞子は霧散した。
「
ぬいは、これで蒼唯にバレても怒られないだろうと考え満足げに帰路に着く。
この胞子を霧散させて回ったことで、ダンジョンブレイクの様子を観察するため設置されたカメラに、ぬいが茸を消滅させている様子が映り込んでしまい、蒼唯にバレる要因となることをぬいはまだ知らない。
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