第30話 都市再建計画

 死毒に犯された都市の再建に向けて、様々なプロフェッショナルが手を尽くしたが『聖女』が設置した結界により死毒の侵攻を阻む以外に有効な策を考え付くことができなかった。

 そしてその『聖女』の結界も変異し続ける死毒の猛攻に対応が出来なくなってきている。このまま手をこまねいていれば、いずれ結界では防げない死毒へと変貌を遂げてしまう可能性が高いのだ。


「この『逆様の槌』は現状、唯一の希望だぜ?」

「そうですか...それで誰がその槌をお使いになられるのですか?」

「それは...『聖女』さまの出番じゃないか?」

「私の?」

「『聖女』の名声を高めるチャンスだしな」


 というよりも死毒の都市に手を出そうとする場合、『聖女』である天使司が関与しなければ許可はでないだろう。


「私に蒼唯さまの功績を横取りするような真似をしろと?」

「...アオっちが造った品を使ったことは、成功すれば発表すればいい。司っちの名声を使わないとなると正直『蒼の錬金術師』の功績を盾にするしかないんだぜ? それで失敗したら実際はともかく、ヘイトはアオっちに行っちまう」

「...そうですか。分かりました」

「もし『逆様の槌』が失敗したら、俺の仕入れた商品を使い失敗したと公表するように用意はしているぜ」

「それは...分かりました」

 

 司は、その言葉から確かな覚悟を感じ取ったので何も言わない。

 柊と司、2人は過去に何度も死毒の都市再建計画に参加し、何度も失敗している。司の結界以外は全て失敗であるため当然だが、司たちにとっては、結界も再建出来ていない点で失敗である。

 今度こそという思いが2人の中にある。


「それで...この『逆様の槌』の説明書何だが」

「これは...責任重大ですわね」


 説明書には

【あべこべにしたいモノの範囲を明確にイメージした上で対象物を槌で叩くです!】

と書かれており、その下に実験を行った結界が記載されていた。それによるとあべこべの基準も使用者にあるようで、使用者が数字の1の反対を0と考えているか、-1と考えているかかで結果も変わるらしい。

 現に蒼唯が熱いお茶をあべこべにした時は、キンキンに冷えたお茶となったらしいが、-100℃近くの物体が生成されてもおかしくは無かったかもしれないと書かれていた。


「つまり私があの都市の反対をどう考えているかによって結果も変化してしまうと」

「それとしっかりと死毒に犯された都市の範囲をしっかりとイメージしなければならない。まあこれは結界を張ってる司っちなら大丈夫だと思うけどな」

「分かりました。何とかやってみます」


 こうして2人の死毒都市再建計画は進んでいくのだった。




 

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