第3話
私は脳みそをフル回転させながら、エリザベートについての記憶を思い出そうとしていた。
たしか、皇帝と姉へレーネが結婚するはずだったのにエリザベートに一目惚れして皇妃になるんだけど皇太后、つまり義母と合わなくて体調を崩してから世界中旅して、ハンガリーの主権をあれしたり、ギリシャ神話っぽい別荘作ったり、乗馬したり、子供が死んだりなんやかんやあって殺されたのよね。
美容とダイエットについてもパイオニア的存在だったはず。
そんなことよりも今考えなきゃいけないのは
不幸の元凶である皇帝に会わないようにして、皇后なんかにならないようにしなくちゃ!それにいい感じの金持ちの貴族となんとか結婚してそこそこ幸せに生きることを目標にしなくちゃいけないわね。
じゃないとシチリアか何かに嫁がされてイタリア統一で亡命生活になるわ。
いずれにしても詰むわね……。
とりあえず目覚められるかほっぺをつねったが痛い。
うん、夢じゃなさそう、ならとにかく冷静に落ち着くのよ。
慌ててたり騒いだりパニクってもどうにもならないんだから。
まぁ、とりあえずは予定通りにへレーネと皇帝が結婚したらいいわけよ。
だから、私は一緒にお見合いの会場になるバートイシュルに行かなきゃいいんだわ、簡単なことよ。
私がそんなことを考えている間にお医者さんが来ていろいろ見て聞いてきたわ。
わからないことはわからないって言うしかないからそうしてたら
「頭を打ったせいで記憶が曖昧だけど、大丈夫でしょう」
というヤブ医者な判断をしてくれましたので、知らない人やわからないことはこれを利用していこう。
というわけで、私は知らないことは色々聞いてみたりしながらやっぱり、皇后エリザベートに生まれ変わったと確信せざるえなくなったというわけ。
「シシィ!どうしたの?」
ある日お母さまが血相変えて部屋に入ってきたので何にもしてないのになんだよ、って思って思わず座っていた椅子から立ち上がってしまった。
「あなたいつの間にフランス語が上達したのよ、全然喋れなかったじゃない」
そんなくだらない話で驚いて部屋に来たの?
私、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語は仕事で使ってたし大学でフランス語はよく学んだから出来て当たり前よ。
そう言えばエリザベートはそこまでフランス語嫁ぐときには得意じゃなかったんだっけね。
「あら、私フランス語は昔から得意よ、ひけらかさなかっただけで」
「まぁ、ヴルフェン男爵夫人から話を聞いたときにはジョークかと思ったわ、最近は馬にも乗りたがらないし、そうだわ、カール・ルートヴィッヒ様にお見舞いのお礼状を書いたら?あなたの好きなスミレの花束を送ってくれたでしょ」
待って、カール・ルートヴィヒって誰よ。
いや、マジで。
勝手に新キャラ出さないで、多分ミュージカルとかにもいないキャラよ。
「カール・ルートヴィヒ?」
「やだぁ、シシィ、皇帝陛下の弟君じゃないの」
「あれ、マクシミリアンじゃなくて?」
「マクシミリアン殿下でしょ!きちんと敬称をつけなくちゃダメよ」
「カール・ルートヴィヒ殿下って敬称をつけて話してくれたら私だって思い出せたわよ、ママったら自分もつけないで話してたくせに怒らないでよ、きちんと気をつけるわ」
ルドヴィカお母さんは少しキレ気味だったけど
大人しく手紙を書くことにした私に満足してニコニコしている。
「あら、素晴らしいじゃない、手紙の書き方もずいぶん大人っぽくなって淑女らしいわ、頭を打ったおかげかも知れないわねぇ」
いくら能天気にしてもそんな言い方ないと思うわ。
やっぱりヴィッテルスバッハ家って変わってるのね。
出来上がった手紙を読み終えた母に手紙を返してもらうと蜜蝋で封をして出してもらった。
実際、今、十四歳だから後一年したらへレーネと皇帝がお見合いをする。
気ままに過ごせるのも今だけか、とりあえず時期になったら風邪か腹痛でバートイシュルに行かないで残ればいいわ、どうせお父さんも行かないだろうから。
私はそう思うと気が軽くなって昼寝をすることにした。
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