快速娘と無関心男子~私の楽しそうなとこ、見たいって言ったよね?~
こばなし
第1話 ねえ、ちゃんと見て。
「おーい、向井くん」
教室で読書をしていると、本を取り上げられた。
僕の世界に入り込んだ声の主は、ジャージ姿の女子。
彼女の名は島村
面倒見がよく、誰彼分け
「ちょっとは関心持とうよ。皆もう校庭に出てるよ?」
「いや、無関心さは優しさだから」
関心を持って人に近づくと、互いにどう傷つくか分からない。
なので他者に関心は抱かず、ひたすら内面と向き合うことこそが優しさなのだ。
「何それ」
彼女みたいな人種には理解できないのだろう。
困り眉毛で小首を傾げると、後ろでまとめたポニーテールがふわりと揺れた。
「小難しいこと言ってないで、早く行くよ!」
「分かってるって」
*
放課後の校庭はオレンジ色の夕陽で染め上げられていた。
彼女に半ば強引に連れだされたのは体育祭の練習である。
クラスで自主的に練習することになったのだ。
「はー、疲れた」
「え、向井くん何かした?」
「走っただろ徒競走」
影の薄さには定評がある。
1着でゴールしているにもかかわらず、2着のヤツが1着だと勘違いされるくらいには。
あまりにもクラスメイトと関わらなさ過ぎて、存在を認識されていない可能性もある。
「冗談だって。まあ、走ったのか分からないくらい速かったってこと」
「見え透いたお世辞をどうも」
島村に言われてもさして嬉しくはない。
一緒に走ったメンバーが遅かっただけだ。
あと、他にも理由がある。
「最後、選抜リレーやるぞ」
音頭を取る体育委員の声に数人が返事を返す。
既に一通りの練習を終えており、残るはクラスの選抜メンバーによる選抜リレーだ。
その中には島村も含まれている。
「本番を意識して他クラスのメンバーを連れてきた」
そう言って体育委員はB組の連中を連れてきた。
「しまむー、ウチと勝負だね」
我らがA組と対するB組の選抜メンバーが準備をする中、島村に話しかけてきたのはB組の中でもひときわ目立つ女子だった。
「ふふ。負けないよ、かねみー」
島村がかねみーと呼んだ彼女は
明るい金髪に青い瞳は、彼女の出生のルーツが海の向こうであることをものがたっている。
「皆の期待、背負っちゃってるからさ」
「……しまむーは相変わらずだね」
両者の間に軽く火花が散ったように見えた。
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