プロローグ

プロローグ



「…貴様等。これはどう言うつもりだ?」


 シンは低く呟いた。辺りには誰もいない。


 真っ暗な空間が広がっているだけだった。





『――頼み事がある』




 何も無い空間に【声】が響く。




「頼み事?」


 鸚鵡(おうむ)返しに聞くシンの片眉が怪訝そうに跳ね上がる。




『――そう』


【声】は頷いたように聞こえた。


『――ある世界を、お前の力で救って欲しい』



「……」


 シンは真っ暗な空間の中、黙って虚空を見ている。



『…特殊な力を使い悪しき行いを繰り返す人々から世界を――』


「――断る」


 シンは空間に響く声を遮り断定して言い放った。その瞬間――




 ――ドシュッ!




 巨大な木製の十字架に、まるでイエス・キリストを模したように磔にされているシンの胸を、『ロンギヌスの槍』が貫いた。




「―…何のつもりだ?」


 シンは顔色一つ変えず虚空を睨む。




『――やってくれるか?』


「…俺にメリットがない」


『――【還した】亡骸はお前の好きにすればいい』



「――そうか」


 シンは【声】のその言葉を聞くとようやく口角を上げ厭らしく笑った。


 その後に、自ら磔からの拘束を解いて胸に刺さった槍を『引き抜いた』。



「…いいだろう」


 ひとつ返事でシンは頷き、


「貴様等の真似事――『偽善者』を演じてやろうじゃないか」


 不敵に笑い、虚空を見上げそう言い放ったのだった――

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