お菓子パーティーが事件の始まり
「遅くなってごめんね!」
教室では二人の女子生徒が机を引っ付けてお菓子を並べている。
「お仕事お疲れ様!」
「それより、王子様を連れてきてどうしたの?」
これは後から聞いたことだが、この二人、僕が柳さんを手伝うことを推測してノートを彼女に運ばせたらしい。そしてここからのことも計画されていたことらしい。
「お仕事を手伝ってくださったの。でもそのせいでお昼が買えなかったのでパーティーに参加してもらおうと思いまして」
お昼を食べずにお菓子を食べる。しかも他人のものをもらって食べる。罪悪感がすごいので断りたい。
だが僕はもう逃げ道を塞がれていた。
「おお〜! さすが王子様!」
「いやもう我らがお姫さまを救ってるから勇者だよ。勇者さまをもてなさなきゃ」
この空気を振り切って逃げるなどしようものならHPがゼロになってしまう。僕はしぶしぶパーティーに参加した。決してしぶしぶなんて顔に出さないが。
「このお菓子コンビニでみっけたんだけど、食べてみよーよ」
「これは。今話題の組分けグミじゃないですか!」
僕がもらったチョコレート菓子をぽりぽりと食べていると何やら他の子達が騒ぎ出した。
「それ、どういうのなの?」
「うふふ」
お菓子を持っている子が何かをよからぬことを企んでいると言わんばかりに顔を歪めて笑う。
「これはね、味が四種類あってねえ」
「味によってグループ分けできるお菓子だよ」
もう一人が言葉を引き継いで教えてくれる。なんだか楽しそうなお菓子である。柳さんも笑顔である。
「これでゲームしませんか?」
柳さんの笑顔は悪魔の笑みだったらしい。味方がいない。つらい。
「いいね! 特定の味に当たった人が罰ゲームとか?」
「じゃあいちごとレモンが明日デートに行く! 証拠にツーショット写真を撮ってくるとか?」
それは、やめてほしい。外出用の服で王子様イメージを崩さずに済む服など持っていない。だが他の三人は乗り気だ。
「やりましょう!」
「私、準備するね」
「頼んだよ」
これは、止められない。
「味は四つ。いちご・レモン・みかん・ブドウ。この中でいちごとレモンを出した人が明日デートに行く。いいね?」
静かに頷く。というか頷くしかなかった。
「さあ、これを混ぜたから……みんな好きなのを取ってね」
グミは全て同じ色。怖いが思い切って一つ手にとる。
みかんかブドウ。みかんかブドウ。みかんかブドウ。
必死で心の中で祈った。だがこの味は、この酸っぱい味は……どうあがいてもレモンだった。
「あ、私みかん」
「私はブドウ」
外れた二人が早々に宣言した。もう、逃げられない。
「私はいちごでしたわ」
柳さんが宣言したことによって視線が僕に集まる。
「れ、レモンだった」
名前を知らない二人の顔がパッと明るくなった。
「ならお姫様と王子様でデートですね!」
「絶対素敵なカップルじゃん!」
そういえばこの手の女子は恋バナも好む。やっぱりよくわからない。
「よろしくお願いします、川岸さん?」
「よ、よろしく」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます