僕はどうすればいいんだ……

 こうして僕はお姫様とデートをしなければいけなくなったのだが、前述した通り僕は制服の他にはロリータ服しか服を持っていない。

「弟よ、優しい優しいお姉ちゃんに君のお洋服を貸してくれないかい?」

 弟に手を擦り合わせて頼む。だが弟は冷たい。反抗期かい? 姉弟で反抗期が被ったらお母さん泣いちゃうよ?

「いやだ。第一、お姉ちゃんに僕の服入らないでしょ」

 いや、多分そうだけど。一応確かめておきたい。だが弟は無慈悲に言い切った。

「伸びるか裂けるかするからやめて」

 ひどい弟だ。

「お姉ちゃん泣いちゃうよ? 僕、泣いちゃうよ?」

「可愛くない」

 中身が可愛くない弟には言われたくなかった。

 さて。こうなったら考えられる道は二つ。

 父に借りるか、ロリータで行くか。

 父に借りる……はないな。父は僕とは異なったファッションセンスを持っている。うん。やめておこう。それに僕は父の匂いがどうしても無理なのだ。

 ならば……ロリータを着ていくしかないのか。だが、それを着て嫌われるのは、怖い。イメージと違うと捨て置かれるのは、怖い。

 お母さんの忠告に従ってちゃんとワンセットはイメージ通りの服を買っておくんだった。

 母は買わなかった時に貸さないと言われてしまって頼れない。

 これは一番マシなロリータコーデを考えるしかない。


 とりあえずパニエは一番控えめなものを。ブラウスも一番装飾の少ないものを、と言っても袖はふんわりしていてフリルもたっぷり付いているけれど。ジャンパースカートも黒のできる限りフリルの目立たないものをチョイスする。フリルが同じ黒ならまだ目立ちにくいはずだ。白ソックスはいいとして、シューズは底がぺたんこのものにしておこう。髪の毛は巻いて、髪の毛に黒のリボンでもつけておこうか。少なくともボンネットよりはマシなはずだ。

 一度、全ての洋服を並べてみる。ブラウス、ジャンスカ、ソックス、シューズにリボン。

 普段よりはまだお人形さん感の薄いコーデになったはずだ。それでもメイクはしっかりするつもりだが。

「メイクに時間がかかるから早起きしないと。つまり早く寝る必要がある。よし、おやすみなさい!」

 僕はきちんと目覚まし時計をセットして布団に入った。


 翌朝、メイクを終え、着替えも終わり、鏡の前に立って思う。

「がっつりロリータだよな、これ」

 もう一度コーディネートを考え直すべきだろう。だがもう時間はない。今出発しなければ約束の三十分前に間に合わない。

「どうか、私を受け入れてもらえますように」

 私は手を合わせて祈った後、部屋を出た。

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