第3話 圧力

 教室の入り口のところで友だちと話しながら、ちらちらともみじの方を見ながら笑っているのがわかった。

 もみじは席を立ち、入り口に向かった。未亜は少し驚いた顔をしてもみじを見ていたが、今は仲間がいるからか、先日のトイレの時のような動揺は見せなかった。

 もみじは別に未亜と話すつもりはない。入り口の所まで来た時に未亜が自分のことを見ているのがわかったが、完全に無視して廊下に出た。

 

 嫌な奴だ。


 その日の帰りの学級会で担任の先生が、クラスから一人、選挙管理委員を出すことになった、誰かいないか?

と話があった。

 選管なんて仕事を進んでやるような人はいない。

「推薦でどうだ?」

 先生がそう言うのでもみじは手を挙げた。

 みんながもみじを見ている。

 もみじはこういう機会を待っていた。

「久保未亜さんがいいと思います。未亜さんはみんなから頼りになる人だと思われていて、違うクラスの子からも相談に来て真剣に話を聞いてあげたりしています」

教室の中かざわついたのがわかった。

 もみじだってそうなることはわかっていての発言だった。

 流石に、これはまずいと思ったのか、先生は

「他の人はどうか?」

と聞いた。

 もみじは未亜の顔を見た。もみじは顔を真っ赤ににしてもみじを睨んでいた。

 クラスの中でよく発言する女子が手を挙げて、別の子の名前を挙げた。

 しっかりものの男子の一人の子だった。

 多数決で後から推薦された男子が選管に決まった。 

 その男子は笑いながら

「えー、おれ?」

と言ったがみんなの拍手を受けて、満更でもないような顔をしていた。

 もみじは未亜をもう一度見た。

 未亜はさっきまでと違って、下を向いていた。

 もみじは帰り道に友だちから言われた。

「最高だったね」

「まじめに言ったんだけど」

 もみじは笑って答えた。

 みんなが未亜のこと、いいふうには思ってないことを確信した。

 

 風待山に雲がかかっているのが見えた。

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