別章
風待山 7
小早川と須藤に頼んでみるか……。
副島は久しぶりに森へと続く道を歩き始めた。
千夏がこの屋敷に来たのは、アパートの郵便受けに入っていた一通の封筒からだった。
封筒には一人暮らしの者たちが共同で暮らす施設の案内が入っていた。
ちょうど、仕事を辞めてから毎日をただ過ごしていることに淋しさも感じ始めていたころだったので、そのタイミングで届いたチラシに興味を持って、この屋敷をたずねたのである。
屋敷には自分と同じくらいの年齢だと思われる女性と、やはり同年代と思われる男性が二人で暮らしていた。
食事や掃除、洗濯、買い物をしてくれると助かると言われた。二人とも昼間は忙しいのだと言う。
こんな寂しい山のふもとで暮らす二人がどういう人たちなのか?
三人が顔を会わせるのは食事の時だけだ。三人が広い食堂に降りて来て、千夏も交えて会話をする。
二人の話には昔話が多い。
共通の思い出があるらしい。千夏にはわからないが、懐かしがって二人はよく昔の話をしている。
「あなたに来て欲しくてお知らせを送ったの」
小早川さんがある夜、お茶を飲みながら話してくれた。
――どうして私に来て欲しかったのか?
千夏は不思議に思って聞いていた。
「私達、どこかで繋がっていると思うんだ」
須藤という男が言う。
――繋がり?
玄関の郵便受けに郵便が届いた音がした。
ちなつがとってきた。
表書きには「副島のおじいちゃんへ」と書いてあった。
誰だろう?副島さんって?
送り主は「松井つばき」と書いてあった。
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