地下アイドルに認知される為に女装しました

真岸真夢(前髪パッツンさん)

第1曲目 アイアムアボーイ!

高校生にしては少々背伸びをしたお高めのカフェーの中で、頼んだウィンナーコーヒーに手もつけず鏡にかじり付く様にしてワタシは前髪、アイシャドウ、チィク、リップクリィム、etc、に余念よねんがないか確認する。


「よし、完ペキかな?」


特段とくだん大きな声を出した訳じゃ無いのに、隣の席のカップルにギョッとした目で見られる。


何だよ、失礼な人たちだなァ


予定までまだ時間が有る。このカフェーでゆっくりコーヒーでも飲みながら時間が来るのを待って居ようか…

口元に少し冷めたウィンナーコーヒーを持って行き、はたと手を止める。


「そうだ…リップクリィム塗ったんだった…」


コーヒーを飲んで塗り直すのは面倒くさい、でもリップを崩さないように慎重にコーヒーを飲むのはもっと面倒くさい。

飲まなければ良い?そんな勿体ない事誰がしようか、店で一番 安価チープなメニューとは言え一杯800円。

高校生の自分にはそれをむざむざドブに捨てる行為なんてできっこ無い。


カップの中のコーヒーをヤケクソ気味にぐィっと飲み干して御手洗いに向かう。


メイクの確認程度ならテーブルでやっていてもまだ許容範囲と思うけどメイクを本格的にやろうとするのは流石さすがに迷惑ユーザー過ぎる。


「あ、あのォ、お客様。ソチラ男性用レストルームとなっておりまして…」


「あッ、すみません」


ぎょッ、声をけてきた店員が目をまンまるに見開く。


またギョッとされてしまった。そんなに変かなァ。


「あのォ、失礼ですが、ご性別は…」


「はい!正真正銘 “男” です!」

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