化身
お風呂から上がった私は、ソファでウトウトしている先生・・・山辺さんをじっと見つめる。短い時間に色々あったせいか流石に疲れたらしい。
私はと言えば、身体は泥のように疲れ切っていたが、脳は完全に覚醒していた。
上手くは言えないけど、何かを無理矢理突き抜けたようなやけくそな達成感。
そしてぼんやりと心地よさに包まれた酩酊感。
そんな変な感情で一杯だった。
服は洗濯機を借りて洗っている途中のため、山辺さんのTシャツを借りている。
それは当然ながら酷くブカブカで、まるで一昔前の漫画に出てきたようなあざといビジュアルだ、と思い苦笑いを浮かべた。
そんな私の事など気づかないように山辺さんは眠っている。
まるで子供のように可愛い寝顔。
私はTシャツを脱いで上半身裸になったまま携帯を持つと、彼のとなりに腰を下ろす。
そして顔をはだけた胸元に軽く押しつけ、携帯をかざし二人の姿が入るように写真を撮る。
これは大切な思い出・・・ではなく、もしもの時の、本当に考えたくないことが起こったときの大切なカード。
これでよし。
いずれは・・・遠からず私の全てをこの人に捧げたい。
それで完全に私たちはお互いをお互いの物に出来る。
清水先生のことは脳裏から完全に消し去ってしまいたいが、あの人のあの言葉だけはどうにも耳から離れない。
(今は女の子にしか見えないけど、そのうちそれも通用しなくなるよ)
(その時、好きで好きで大好きな山辺先生はどう思うかな)
(あの人、ああ見えてアイドル大好きなミーハーだから)
ふと我に返る。
怒りで呼吸も忘れていたらしい。
「そんな事ないよね・・・山辺さん」
そうつぶやくと裸の胸にまた山辺さんの顔を押しつける。
彼の体温が素肌を通して心臓に直接染み込んでいく。
そのくすぐったいような気持ちよさに思わず震える。
私は両腕で山辺さんの頭を包みこむとそのまま顔を彼の髪に埋めた。
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