夢想

それからの私は男子とも女子とも遊ぶこと無く、園内や園庭の端で一人で遊ぶようになった。幸い、周囲からちょっかいを出されることは無かったが、代わりに話しかけられることも無くなった。

虐めでは無いんのだろうけど、単純に石ころのような存在になっただけ。

それからの私は一年間、石ころでありながら空想の世界に生きていた。

あるときはお姫様。

あるときは先生のような綺麗な大人の女の人。

それらの人物として生きるその物語の世界はとても甘く、キラキラしていた。

そしてその物語の最後はいつも決まっていた。

自分だけを宝物のように見てくれる格好いい王子様が迎えに来てくれて、その人と結婚し末永く幸せに暮らす。

その世界を飽きること無く何度も何度も繰り返し考えた。

あるときは白馬。あるときは大きな白い車。

自分は毎回きらびやかなドレスを着る。

どんなにねだっても、女の子の服は買ってもらえなくなったため、テレビや本で見るドレスを記憶し何度も思い浮かべた。

いつかは絶対あんなドレスを着て、お姫様になる。

そして王子様に迎えに来てもらう。

現実があまりにかけ離れているせいか、その願望は意識の奥にまるで焼き印のようにくっきりと刻まれていった。

そんな生活の中で、ママ同士が仲良くなった縁で二人の男の子に出会った。

諸戸(もろと)健一と都築(つづき)雄馬という名前の二人とは、何故か気があった。

二人はなぜか他の男の子のように汚く汚れている感じも無くて、いつもパリッとしたシャツを着ていたし、何より健一の家で雄馬と二人で遊んだとき、健一のお姉さんの持っていた人形に目を輝かせていた私に健一は言ったのだ。

「これで遊ぶか?」

てっきり嫌がると思っていた雄馬もウンウンと頷いている。

私は信じられないような心地で「遊びたい」と言った。

それから、保育園は違ったけど二人と遊ぶ毎週日曜日の時間が私にとって宝物のようになった。

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