第11話 お祭り開催に向けて

「じゃあ、ガイルさんはお兄さんにさっきのことを確約させてね。それと、この国での催事でいいのかな。お祭りを仕切っている部署の人をアドバイザーとして引き込みたいんで、それもお願いね」

「ああ、分かった。他はいいのか?」

「ん~じゃあ、この国の地方まで含めた地理や街道なんかの諸事情に詳しい人もお願い」

「分かった。なんとかしよう」


 ガイルさんは俺のお願いにイヤとは言わずに、早速動いてくれるようだがお兄さんと話すのは気が進まない様で嘆息しながら部屋を出る。


「俺達は何をすればいい?」

「何も」

「は? 聞き間違いか?」


 アオイは自分達は何をすればいいのかと聞いて来たが正直、さっき頼んだ人材が揃わないことには計画も何も立てられない。


 下手すれば頭っから反対され考え直しになるかも知れないし、規模が大きすぎるとか、不敬だとか言われ反対されるかも知れないからね。


 だから、先ずはお伺いを立ててから『無問題』と言質を取りたい。


 だけど、アオイは暇な様で俺に聞き直して来たので、俺はガイルさんが戻るまでは特に何も進められないと話し、カリナには工房を開く場所を調達するように言う。


「違うよ。ガイルさんに頼んだ人が揃うまでは何もすることがないってこと。カリナはどこか適当に工房が開けそうなお店なり家なり屋敷なり探してね」

「え? 私が?」

「そうだよ。なんで?」

「いや、なんでって……私はこの国のことは何も知らないわよ」

「うん、俺も」

「ええ、そうね……じゃなくて、私一人を追い出すの?」

「追い出すって、人聞きの悪いこと言わないでよ。そもそも、ここに来た目的を忘れたの?」

「……忘れてはいないが」

「それに元々トガツ王国でも最初は知り合いはいなかったんでしょ」

「……それはそうだけど暇なら手伝ってくれてもいいじゃない」

「えぇ~」

「イヤなの?」

「イヤじゃなくて、面倒臭い」

「ヒドい! 私一人にさせるつもりなの!」


 カリナに一人で工房を調達する様に言えばヒドいと言われてしまうが、誰の為の工房なのかを思い出して欲しい。


「いやいやいや、元はカリナの車でしょ」

「そうだけど……いいじゃない少しくらい手伝ってくれても」

「分かったよ」

「ホント!」


 カリナは俺に手伝って欲しいと言うが、俺もこれからやること、考えることもあり街をウロつくのは興味を惹かれるが、今はそれどころじゃない。だけどカリナには「分かった」と返事をすれば途端にカリナの顔を綻ぶ。そんなに喜ばれてしまうと良心の呵責に苛まれそうになるが、ここは心を鬼にしてタロを召喚する。


「うん、タロ。お願いね」

『ワフ!』

「え? なんで?」

「用心棒にもなるし、タロが入れない場所なら車も作れないから大きさの目安としてもいいよね」

「……もう一度、聞くわね。コータは手伝ってくれないの」

「うん、タロに任せた」

『ワフ、任された!』

「……いいわ。じゃあ、行ってくるわね。アオイも来ないの?」

「俺は行かない方がいいだろ」

「あぁ~それもそうね。分かったわ。じゃ、タロ。お願いね」

『ワオン』


 カリナは俺がどうあっても手伝わないと分かり、ならばせめてアオイはと聞いてみるが、アオイも自分の性格を考えてから行かない方がいいだろと返しカリナもそれに納得しタロと一緒に街へ出る。


「コータも人が悪いな。少しくらいは街歩きに付き合ってあげてもいいだろうに」

「そういうのはある程度落ち着いてからでいいよ。それに会場の設置とか確認しないとだから後でイヤと言うほど歩き回るよ」

「イヤになるほどか」

「そう、イヤと言っても歩かないと終わらないからね」

「それこそ、人任せでいいのでは?」

「ダメだね。もちろん、全部を一人でするのは無理だから手伝ってくれる人は大勢必要だけど、要所要所で自分の目で確認しないと安心出来ないよ」

「ヘンなところでマジメなんだな」

「へへへ、そうでもないよ」

「……褒めたつもりはないぞ」


 カリナは俺と街ブラを楽しみたかったんじゃないのかと言うが、街ブラなら後でイヤと言っても止められないくらいに歩き回るから今はいいと断る。


「それにしても遅いな。まさか、お兄さんとトラブっているとか……」

『肯定します』

「えぇ~」

「どうした?」

「あ……ガイルさんがトラブっているっぽい」

「そうか。なら「ちょ、ちょっと待ってよ!」……何故、止める?」

「いや、止めるでしょ。なんで拳を握っているの? 必要ないよね?」

「ん? 口でダメならコレだろ。それと確か……『顔は止めときな。ボディにしな』だったか?」

「いや、それは使い方が違うから。どっちかと言えば『拳を交えたらダチだ』じゃないかな……って違うよ!」

「なんだ? 情緒不安定か?」

「ハァ~とにかく、そんな物騒なことはしないから。それにいくらガイルさんと同じ顔をしていても相手は一国の国王だからね」

「だから?」

「いや、だからじゃなくて「マズいことになった」……ガイルさん」


 アオイを宥めていたらガイルさんが戻って来たけど、部屋に入ってきた時に言った「マズいことになった」ってのはどういうことだろ。イヤな予感しかしない。

『肯定します』

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