第6話 やっぱり、これも『あるある』なんだ……
暫くしてから「馬車の準備が出来ました」と一人の衛兵がガイルさんに声を掛けると「すまんな世話になる」とガイルさんが衛兵を労う。
「いえ、それはいいのですが……」
「何かあったか?」
「あ、その……」
「構わない。ここにいるのは俺の仲間だ。特に秘密にすることはない」
「王弟だって言わなかったクセに」
「あ~まあ、そうだったか?」
ガイルさんの労いに対し衛兵が何か言いたそうだったのだが、俺達がいるから話しづらいのか、ガイルさんの背後にいる俺達をチラッと見る。それを感じ取ったガイルさんが俺達は自分の仲間だから気にすることはないと言うが、王弟だったとは聞いてないよと俺が言えばガイルさんはバツが悪そうな顔をしながら頬を掻き、「で、なにがあった?」と衛兵に問い掛ける。
「実は……」と衛兵が言うには、ガイルさんのお兄さん。つまり王様が非常に不機嫌であるらしいということだった。その不機嫌の理由はどう考えてもガイルさんの突然の帰省にあるのは確かなんだけど、とりあえずは会おうということなので今から、謁見の間に案内すると言う。
「じゃ、頑張って」
「は?」
「え?」
「『え?』じゃないだろ。お前達ももちろん一緒に行くだろ」
「へ? 何がもちろんなの? 俺達には一切関係ない話だよね」
「いやいやいや、ここまで来てそれはないだろ。ここで問題なく活動する為にもお前達も面通ししておく必要があるだろ」
「いや、それって俺達っていうか、少なくとも俺には関係ない話でしょ」
「そんな理屈が通用すると思うか? ん?」
「通用するでしょ。少なくとも俺には関係のない話だよね」
「あ~俺と兄に関してはそうだが、刀の製法やカリナの車に関してはそうも言えないだろ」
「いやだからさ、それとガイルさんのお兄さんとの確執は別物でしょ。仕方なく俺達が王様に会うにしてもその辺の障害をなくしてからにして欲しいんだけど」
「無理だな」
「早っ!」
ガイルさんがお兄さんである王様に会うのを止めようとかそういうことじゃない。でも、ガイルさんが原因で不機嫌な王様に俺達も一緒に会う必要があるのかと俺が言えば、ガイルさんは是が非でも一緒に会ってもらいたいと言う。
でも、俺達は関係ないだろと力説するも後々のことを考えれば王様に会っていた方が、面倒がないと言うことと、俺が下手に教えてしまった刀の製法とかも含めて一緒に済ませてしまった方がいいとガイルさんは俺の手を絶対に離さないからと力を込める。
「分かりました。でも、俺からは何も話さないよ。ガイルさんで全部、仕切ってね」
「少しは手伝おうとは思わないのか?」
「家族間の捻れは家族でお願いします」
「冷たくないか? 友達だろ?」
「気のせいです」
「アオイ、お前からもなんとか言ってくれ!」
「ふぅ、ガイルよ。俺から言えることは一言だけだ」
「なんだよ!」
「面倒だ!」
「な! カリナ、お前はどうなんだ!」
「いや、そもそも私達にお家騒動のことを言われてもだし」
「……ま、そうか。そうだよな」
ガイルさんは王様のお兄さんとの確執を俺達にもなんとか手伝ってもらいたかったみたいだけど、俺達にしてみれば『
あるある的にもたまたま出会った人が高貴な立場だったってのはよくある話だとは思うけどさ、俺達がそれに介入するのは……あるあるなのかな? いや、でも面倒だからパスでとガイルさんに念押しする。
「冷たいんだな」
「だって、さっき王弟って言われて『はい、そうですか。じゃ、お兄さんとの仲を取り持ちましょう』とはならないでしょ」
「ぐっ……」
「ま、そういう訳だから、お家騒動は身内で済ませてね」
「……分かったよ。でも、側にはいてくれよ」
「子供かよ!」
「分かってくれよ。俺だって心細いんだよ!」
「助けてくれる幼馴染みとかいないの?」
「……」
「あれ? もしかしてのボッチ?」
「そ、そんなことはないぞ……多分……」
ガイルさんの必死の説得? で、俺達もガイルさんと一緒に王様と会うことになってしまった。この流れ的にやっぱりカリナもそうなのかなと尋ねてみれば『ぷひゅ~ぷひゅ~』と吹けない口笛を吹いて誤魔化すカリナだった。そして流れるいつもの『肯定します』にハァ~と嘆息するしかない。
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