第7話 パンツが欲しい!
今、俺の部屋には俺、タロ、メイドのお姉さんとアリス嬢、そこへ姫さんとクリフさんが加わりちょっと狭く感じている。
アリス嬢はタロに跨がりご機嫌で、メイドのお姉さんはそれを見てほっこりしている。じゃあ、俺はと言えば姫さんと一緒のテーブルに着きクリフさんが煎れてくれたお茶を飲んでいる。
「何気にこっちに来てから初めて口にした飲み物だ」
「どうしたの?」
「何かお気に召さないことでもありましたでしょうか?」
そんな俺の呟きに姫さんとクリフさんが反応して俺にどうしたのかと聞いてくる。俺としてはまだ地球……こっちの人達からしたら、あっちが異世界だよな。いつかは説明しないとダメなのだろうかとか考えていると、何かを忘れているような気がしてしょうがない。
「なんだろう。何が気になっているんだろうか」
「もう、ホントにどうしたのよ」
「いや、なんかさ。大事なことを忘れている様な気がするんだけど、それが何かが分からないんだよ」
「ふ~ん、大事なことって何? もしかしてお父様への挨拶とかかしら」
「えっと、ソフィアさん」
「はい、なにかなコータ」
「俺とは友達になったばかりだよね? しかも、ほとんど強制的に」
「ええ、そうよ」
「でも、その割には、友達以上に進展させようとしていない?」
「あら、なんのこと?」
「ハァ~もういいよ」
何がどうして気に入られたのか知らないけど、俺から見た姫さんは肉食獣にしか見えない。いくらお決まりのテンプレ展開でも姫さんの婚約者になる気はない。それにどうせならもっと異世界を冒険したいんだよ俺は!。
しかし、何を忘れているんだろうかと再び考えてみるが何も思い浮かばない。すると、姫さんにメイドのお姉さんが「お食事前に湯浴みはどうですか?」と言ったのを聞いて何を忘れていたのかを思い出す。
「そうだ! パンツがなかったんだ!」
「え、いきなり何! まさか履いてないの?」
「んなわけないでしょ! クリフさん、パンツが欲しいんです」
「え? 急にそんなことを言われましても……」
「もう、なんでクリフのパンツを欲しがるのよ! 私のじゃダメなの!」
「え? い、いや、そうじゃなくて、俺の替えのパンツがないから買いたいんだけど……」
「あ! そ、そういうことでしたか。いきなり私のパンツが欲しいなんておかしいと思ったんです」
「ごめんなさい」
いきなりクリフさんに対し「パンツが欲しい!」と言ったものだからか、クリフさんの顔が少しだけ赤くなり俯いてしまったのは気のせいだと思いたい。
「コータ、パンツなら私のをあげるわよ。いくらでも持って行きなさい!」
「いや、いらないから」
「何よ! 私のパンツが汚いとでも言うの! 新品なのよ!」
「だから、そうじゃなくて」
「じゃあ、どういうことなのよ!」
「だから、なんで俺が女児パンツを履かないとダメなんだよ。どんなバツゲームだよ」
「お嬢様、少々はしたのうございます」
「……分かったわよ」
そして、別にクリフさんのパンツが欲しいのではなく替えのパンツが欲しいということを説明するのだが、姫さんは自分のパンツを差し出そうとしてくる。何が悲しくて女児パンツを履かなきゃダメなんだと、力一杯遠慮させてもらう。
「ですが、コータ様の希望は分かりました。そうですね、ついでと言ってはなんですが、この際『冒険者ギルド』で冒険者登録とタロ様の従魔登録を済ませてはどうでしょう」
「え? 冒険者登録に従魔登録ですか?」
「はい。聞けば山で暮らしていたとのことですが、身分証明書などはお持ちではない様子。なので、冒険者ギルドにて登録を済ませ、冒険者ライセンスカードを発行してもらえば、それが身分証明書となります。そして、タロ様も従魔登録を済ませておかないと、他の町では野良の魔物として討伐対象となりかねません」
クリフさんから「冒険者ギルド」の話を聞きテンションが上がる。だが、従魔登録と言われはて? となるが理由を聞いて焦ってしまいクリフさんを急かしてしまう。
「それは困ります! 早く行きましょう!」
「そうですね、では少々お待ち下さい。この町は不案内なもので誰か案内してもらえる者を頼んで参ります」
「よろしくお願いします」
俺の焦りからクリフさんではなくこの町に詳しい人に案内を頼んでくると言ってクリフさんが部屋から出て行くのを見ていたら、姫さんがなんとなく不機嫌になっているようだ。
「ズルい!」
「え? 何がズルいの?」
「だって、コータだけ町に出るんでしょ。そんなのズルいじゃない!」
「えっと、パンツを買って用事を済ませてくるだけなんだけど?」
「ズルいものはズルいの!」
「……」
姫さんの言いたいことがよく分からないが、俺が町に行くのがズルいと言われても替えのパンツも大事だが、冒険者登録も従魔登録も俺には必要なことなんだけどと思っているとクリフさんと一緒にこの館の衛士らしき男性と一緒に俺の前に立つ。
「コータ様、こちらのハンスと一緒にお出掛け下さい」
「ハンスと言います。なんなりとお申し付け下さい」
「丁寧にありがとうございます。私はコータと言います。私は貴族ではなく一平民ですので、私にまで謙る必要はありません。どうか、普通に接して下さい」
「え?」
ハンスさんは俺からの普通にと言われ、クリフさんの方を見るとクリフさんが軽く頷くので「分かったよ。よろしくな」と右手を俺に差し出して来たので俺もその手を握り「お願いします」と返す。
「では、準備出来次第行こうか」
「はい、タロ!」
『わふ!』
ハンスさんがすぐに行くと言うので俺は放っておいた肩掛けバッグを手に取るとタロを呼ぶ。俺に呼ばれたタロが急に立ち上がったためにアリス嬢が落ちそうになるがメイドのお姉さんに優しくキャッチされケガすることも泣くこともなかったがキョトンとしている。
この間にハンスさんとタロと一緒に部屋を出ようとすると、後頭部に視線が突き刺さっているのを感じてしまう。
「じゃあ、お留守番よろしくね!」
「お留守番……そうです。留守を守るのはつ「単なる友達だからね。じゃ!」……」
俺に言葉を遮られ不機嫌そうにしている姫さんを横目になんとか部屋から出ることが出来た。
ハンスさんに「いいのか」と聞かれたが、「いいんです」と言って館から出る。
パンツを買うことも重大だが、冒険者ギルドが楽しみでしょうがない。やっぱりここでもテンプレ展開が発生するんだろうかと今から、胸がドキドキだ!。
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