異邦人

Danzig

第1話


異邦人

私は異邦人(いほうじん)

同じ場所には、ずっと居られはしない

そうやって今までも、ずっと彷徨(さまよ)ってきた


彷徨って

寂しくなって

荷物を降ろして人に近づく


そこには、人々の輪があって、

楽しそうな、笑いがあって、

いつもやさしく、私を出迎えてくれる


でも、そこの人たちには、私よりも、ずっと大切な人たちがいる

そんなことを、

そんな当たり前のことを、

当たり前のように、気づかされて

寂しくてたまらなくなり、

また、そこに居られなくなってしまう。


やはり、私は異邦人なのだ

そして、その事実を突きつけられるのが、

たまらなく悲しい


長く彷徨っていたせいなのか

そもそもの私が、そうであったのか

私は、どこの人たちとも、少し違っているようだ


だから、

その場に根を下ろすなら、私自身を変えなければいけない。


その輪の中に、ずっと居られるように、

そこの人達と、同じになるように、

私を変えなければならない


でも、

私には、それが出来ないのだ

私が私でいなければ、

私の中にある、私の存在価値が、なくなってしまうのだ

私には、それがたまらなく恐い


人と深く付き合おうとしてはいけない

その人には、お前よりも大切な人がいるのだから

どうせ悲しむのは、お前なのだから

お前はお前でしか、いられないのだから


そう自分に言い聞かせて、私はいつも異邦人のままでいる


それでも、やはり、また寂しくなってしまい

そして、人に近づいてしまう。

ここが私の居場所なのかもしれない。

そんな淡い期待を、心のどこかに持ちながら


どれだけ人が優しくても、

どれだけ人を好きであっても、

異邦人は、やはり異邦人でしかないのだ

それを何度も思い知らされる


それが悲しくて、悲しくて

また彷徨い癖が、首をもたげる。


「それがお前なのだから」と、私自身に言い聞かせて

逃げるように、そこを離れていく


お前は異邦人

彷徨い続ける事でしか

お前の心は守れない



でも、まだ・・・

もう少し。


もう少しだけでいいから、

ここに居させて欲しい。

悲しくたって、耐えるから。


今度は心が折れるまで、

粉々に砕け散るまで、

それまで、ここに居させて欲しい


もう心も無くなって、

彷徨う事すら、出来なくなっても

後悔しないと誓うから


だから

もう少しだけ、

ここに居させて欲しい。


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異邦人 Danzig @Danzig999

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