王子と公爵令嬢の恋愛相談係り。お前ら私を挟んで恋愛すんな!もう直に言いやがれ!
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王子と公爵令嬢の恋愛相談係り。お前ら私を挟んで恋愛すんな!もう直に言いやがれ!
初めまして、私はシオン・マークレイ伯爵令嬢です。皆様に是非聞いて頂きたいお話があります。
実は、とある縁からこの国の王太子であるノア・シンシア王子から婚約者であるマリア・アイリス公爵令嬢についての【恋愛相談】を受ける事になったのですが、その相談が、甘々過ぎて吐きそうなのです。
一言で言えば、この【作品紹介を読めばそれで完結】してしまいますが、本編ではもう少し詳しく話したいと思います。
私の住むシンシア王国では、貴族の子供達は12歳から18歳まで王立の学園に通うのが義務付けられております。
そして、幸運な事に王族であるこの国の第一王子であるノア・シンシア様と同い年であり、同じクラスになったのです。
幸運な事と言ったのは、次期国王様と同い年で、同じクラスというだけで、今後のお茶会などでは羨望の眼差しで見られるからなのです!
そして、もし親しい仲になれば………せめて友達にでもなれれば、実家の事業など口添えしてもらったりできるかも知れませんしね!
シオンはクラスで婚約者と話しているノア様とマリア様に視線をやった。
「いつ見ても仲が良くお似合いのカップルですわね」
マリア様は冷静沈着でマナーも完璧な未来の王妃様!王妃教育で表情が抑制されているせいで無表情でも、ノア王子と一緒にいる時は、暖かい表情になっていて癒やされるのですよね~
そんなシオンは心の中で御馳走様です!と、拝んでから教室を後にした。
放課後、図書室で『知り合い』に頼まれた用事を済ませた私は、そろそろ帰ろうかと席を立った時、ノア王子に声を掛けられた。
「ああ、良かった。まだ居てくれて」
「はい?ノア王子様、私に何か御用でしょうか?」
特に授業などの用事の時しか話をした事のないシオンは首を傾げた。
「君の事は噂になっていてね。私もお願いしたい事があって来たんだ」
!?
「う、噂ですか…………?」
「うん、頭を下げてお願いをするとどんな相談でも乗ってくれるっていうね」
オオゥノォォォォォォオオオオオオ!!!!!!
私は気弱ではありませんが、強くお願いされると断れない性格なだけなんですよーーーーー!!!!!!
今日も図書室で翻訳の手伝いをしていただけなんですが!?
「そ、それで、お役に立てるかはわかりませんが、どのようなご相談でしょうか?」
とりあえず、話だけ聞いて無理そうなら断ろう。
その時、シオンの中ではノア王子の頼みを聞いて恩を売ろうという考えと、穏便に断る方法の二つを考えていた。
「それなんだが、他の者には秘密にして欲しいのだが、良いだろうか?」
「はい!守秘義務は厳守するので大丈夫です。ご心配なら一筆書いてもいいですよ」
色々とお願いされる過程で、よく秘密にして欲しいと言われる事もあるしね。
「ははっ、そこまではいいよ。それで相談なんだけど、私の婚約者に付いてなんだ」
なんだと!?
シオンは平常心を心掛けながら聞き返した。
「マリア様がどうなさいました?」
ノア王子は言い難くそうに口を開いた。
「そ、その…………マリアとどうやったら、もっと『仲良く』なれるのか相談に乗って欲しいんだ」
ホワイッ?
なんだって?
「えっと………すでに仲のよい関係だと見えましたが?」
「ああ、仲は悪くないと思う。だが、どうしても壁がある感じがあってね。公務の時はともかく、学生の時間の時は、もっとフレンドリーに触れあったりしたいと思うんだ」
うん?
それは、結婚前にチョメチョメしたいってこと!?
まだしょ………コホンッ、経験のない私には荷が重いんですが!?
「ノア王子様、結婚前に………そ、その……そういう行為はマズイのでは?」
「ノアでいいよ。様はいらない。それより、マズイと言うのはどうしてだい?」
えっ!?
なんでそんな堂々と言い返すのですか!?
シオンは真っ赤になりながら、言葉を探していると───
「私だって、マリアと手を繋いで歩きたいんだよ」
うん?
なんだって???
「手を繋ぐ……………ですか?」
「ああ!そうだ!マリアは綺麗過ぎて、触れるのですら躊躇ってしまうんだ!しかし、他の学生見たく手を繋いで歩いたり、こっそり、街で買い物などしてみたいんだ!」
えーと、これはどういう状況?
この完璧王子様は何を言っているんでしょうか?
ヘタレ?
ヘタレなの??
ヘタレなんだなっ!???
シオンが絶句しているとノアは続けた。
「どうかマリアと仲良くなれるよう、仲を取り持って欲しい。マリアにはシオン令嬢には色々と助けられたと言って、1人の友人として紹介しておくから」
!?
それは、王族(未来の国王)と公爵令嬢(未来の王妃)と関わりを持てると言うことですよね!
上手くいけば、将来は安泰では?マリア様の侍女にでもなれれば、実家も安心できる!
シオンは二つ返事で、わかりました!と元気よく返事をするのでした。
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ええ、ノア王子の頼みを聞いて、マリア公爵令嬢との仲を発展させてやる!と、意気込みを抱いていた次の日──
「───と、言う訳で、シオン様の噂を聞いてお願いがあります。ノア様との仲を取り持って下さい!」
どういうこと?
どうしてこうなったーーーー!!!!!
次の日の朝、ノア王子は仕事が早く、マリア様に私に色々助けて貰ったと友人として紹介してくれた。
そして、放課後───
ノア様の仲を取り持って下さいときたもんだ。
『恥じらう乙女』の顔のマリア様よ?
いつものクールビューティーはどこ行った!?
めっちゃ顔に感情が出ているよっ!?
「えっと、ノア王子とは上手くいっているように見えましたが?」
「ええ、仲は悪くないと思いますの。でも、どうしても完璧な婚約者を演じる為に、壁がある感じになってしまって。公務の時はともかく、学生の時間の時ぐらいは、もっと恋人の様に触れあったりしたいと思うのよっ!」
あ~~~昨日、同じような事を聞いたなぁ~
シオンは遠い目をして現実逃避した。
マリアはシオンの両手を取ってお願いした。
「シオン様は色々な方の相談に乗って解決されてる凄腕の交渉人(ネゴシエーター)と伺っております!ノア王子の相談も解決されたとか、是非そのお力添えをお願い致します!」
おいっ!
いつから私は交渉人になっているのよ!
それにノア王子の相談も解決してないから!
もっか現在進行系で、動いている所だからね!
シオンは引き攣る顔で頷くと、マリアはそうだと言って小さな用紙を渡してきた。
「これは?」
「小切手ですわ。必要経費としてお受け取り下さい。足りなければ追加でお支払いたします。無論、経費ですので、上手くいった時の成功報酬は別にお支払致します」
シオンはそこに書かれていた金額に目がお金のマークになった。
「こ、これは多過ぎるのでは!?」
「大丈夫です。私のポケットマネーですのでお気になさらず」
これが国内屈指の名家であるアイリス公爵家ということなのか。こんな大金をポンッと出すなんて。
うん?
この金額が経費ということは、成功報酬はもっと大きいってこと!?
シオンは急にやる気になり、ぜひお任せ下さい!と元気よく伝えるのでした。
そこからは、真面目に行動しました。
二人とも、放課後はとても忙しく、王族の公務や、王妃教育など、分単位のスケジュールの為に、学園にいる時間に、二人の仲を発展させる案を考えた。
班行動の授業では、一緒になって二人で行動させたり、お昼休みの時間には、食堂を使わずに、シオンが作ったサンドイッチをマリアに渡して、裏庭でシートを引いて一緒に食べたりと、シオンも一緒にいる時間が増えていった。
そして──
「聞いて下さいシオン!今日は、授業の道具を片付ける時に、ノア様と手が触れたんですの♪」
「へ、へぇ~良かったですね」
「聞いてくれシオン!今日、マリアと手と手が触れ合ったんだ!」
「あー、良かったですね……………」
最初の頃は、二人のピュアなキラキラした言葉に、温かい目で見守って心が和んだものですが、こうも続くと胸焼けしそうです。
王族の性教育はどうなっているのでしょうか?
この調子だと、マリア様は子供はコウノトリが運んでくると思ってそうで怖いですわね。
「シオン!今日はノア様とお昼を一緒に食べれたの♪頑張ってお弁当を作った甲斐がありましたわ!手伝ってくれてありがとう!」
「シオン!今日はマリアが手作りのお弁当を持ってきてくれたんだ!なんという幸福だろうか!?こんなに幸せでいいのだろうか?」
……………誰かタスケテ。
甘々で胸焼けして死にそうデス。
ってか、こんなピュアな二人が国のトップになって大丈夫なのだろうか?
基本的に善人である二人が国を仕切れば善政を敷くだろうが、悪意ある者に対抗できるか不安である。
そんな時であった。
最近いつも一緒にいる私に対して快く思わない連中から呼び出しを受けたのは。
「いったい、どういうおつもり?シオンさん?」
校舎裏に呼び出された私は、目の前にいる主犯のレイチェル・バイトドック侯爵令嬢と対峙していた。
レイチェル令嬢は何人かの取り巻きと一緒にいて、面白くなさそうに腕を組んでシオンに言った。
「えーと、何のことでしょうか?あっ、いつもの『お願い』でしたら、ノア様とマリア様から頼まれ事があるため、申し訳ありませんが、しばらくお断りします」
「シオンさん!あなた舐めてますの!たかだか伯爵令嬢風情が、侯爵家の私に逆らえると思ってますの!?」
シオンは首を傾げて???とハテナマークを作った。
「レイチェルさんこそ、私が王太子であり未来の王様と王妃様の『お願い』に逆らえると思ってます?」
・・・・・沈黙が流れた。
「コホンッ、ならばノア様の頼まれた用事をしつつ、私のお願いも『いつも』通りにやりなさい!」
そんな無茶な!
こっちは胸焼けしそうな仕事を頑張っているのよ!これ以上のお願いを聞く事なんて無理だから!
レイチェルは黙っているシオンに業を煮やして、シオンのほほを叩いた。
パンッと音がして、レイチェルの長い爪がシオンの顔を傷付けた。
「イタッ…………」
取り巻きが顔は不味いですとレイチェルに言っているが、レイチェルは止まらなかった。
「貴女が悪いのよ!貴女が私の命令を聞かないから──」
レイチェルがもう一度シオンを叩こうとした時、レイチェルの腕を掴む者がいた。
「なっ───誰よ!」
レイチェルは驚き振り向くと、そこにノア王子がいた。
「貴様こそ、俺の友人であるシオンに何をしている!」
ギリッと掴んだレイチェルの腕に力を入れた。
「痛いですわ!ノア様!?」
レイチェルは懇願するがノアは離さなかった。
「シオンさん!大丈夫!?」
そこにマリア様もやってきて、シオンの顔を見るなりハンカチでシオンの顔に当てた。
「……………顔は女の命と言うのに、その顔を傷付けるなんて………」
ワナワナと震えるマリアにシオンはかすり傷ですと弁解した。
ノアは掴んだレイチェルの腕を乱暴に放った。
「きゃっ!?」
その反動で地面に膝を着いた。
「レイチェル・バイトドック侯爵令嬢…………よくも大切な友人を傷付けてくれたな?覚悟はできているんだろうな?」
普段のイケメン爽やか王子からは想像できないほどの、虫けらを見るような冷たい目でレイチェルを見るノア王子にシオンは戸惑いを隠せなかった。
「わ、私は別に何も───」
「謝るのではなく、まだ弁解するのですか?最近、少し周りを甘くし過ぎたかしら?こんなバカがつけ上がるなんてね」
更に温度が下がる気持ちだった。クールビューティーのマリア様も冷たい目でレイチェルを睨み付けていたのだ。
「私が何も知らないと思っているのかしら?貴女が、シオンに先生からの課題を丸投げして、シオンやった課題を、自分がやりましたと言って手柄を奪っていたこと。そして最近、私達がシオンと一緒に居るせいで、先生の課題をシオンにお願いできない為に、課題ができず、評価が下がってしまったこと……………全部知っていてよ?」
ビクッ
まさか気付かれていたとは思ってもいなく、レイチェルは震えた。
「シオンに逆恨みして危害を加えるなんて本当にクズね。取り巻きも使えない者達ばかりで、お山の大将気取りが笑えるわね」
マリアはレイチェルに近くと耳元で囁いた。
レイチェルはマリアの『絶対零度』の気迫に、下を向き震える事しか出来なかった。
「マリア、そのくらいでいい。それよりはやくシオンを保健室へ連れて行こう。傷が残ったら大変だ」
ノア王子の言葉にハッとしたマリアは振り向くとレイチェルに言った。
「命拾いしたわね。レイチェル令嬢。そしてその取り巻きの連中。この報いは受けてもらいますからね。そして万が一、シオンの顔に傷が残ったら…………貴様らも同じ目に合わせてあげるから覚悟してなさい!!!」
ひぃーーー!!!!
と、取り巻き達は涙を流しながら叫んだ。
マリアはシオンに手を貸して保健室へと連れて行くのだった。
「シオン大丈夫?」
心配そうにシオン傷を心配するマリアにシオンは慌てて大丈夫ですと答えた。
「綺麗な傷だからすぐに痕も残らず治るよ。だた、消毒と傷口を清潔に保つことね」
保健室の先生に手当されて、マリアが一安心した。
先生は職員会議があるからとすぐに出ていってしまったので、マリアとノア、シオンだけが保健室に残った。
「二人とも、助けて頂きありがとうございました」
頭を下げるシオンにマリアが抱きついて謝った。
「いいえ、助けが間に合わずシオンに怪我をさせてしまいました。本当にごめんなさい」
「私からも謝らせてくれ。私が親しくすると、その影響を考えていなかった。本当にすまない!」
二人に謝られてシオンは慌てて首を振った。
「そんな事はありません!私は助けて頂いて本当に嬉しかったんですよ!?それに二人ともとっても格好良かったですしね!」
シオンはこの言葉を言ってから後悔した。
「まぁっ!シオンもそう思いました!?シオンが叩かれる前にレイチェル令嬢の腕を掴んだノア王子、とっても格好良かったですわ♪」
「何を言っているんだい!レイチェル嬢に睨みを利かせていたマリアも、とっても凛々しくてステキだったよ♪」
「ノア…………」
「マリア…………」
二人は顔を真っ赤にしながら見つめ合った
甘い空気が流れる。
おーーーい!
私も居るんですが!?
私を空気にしないで下さーーーーい!!!!
てかっ、お前ら相思相愛じゃねーか!
私を挟んで恋愛相談すんなっ!
直に言え!直にーーーー!!!!
シオンがキレたくても、方や王太子、方や公爵令嬢にて、自分より位の高い人達の為に、心の中で叫ぶしかないのであった。
……………泣いていい?
シオンの受難は続くのであった。
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それから、シオンはなんやかんやで両想いの二人に挟まれながらも、デートのセッティングや、二人での時間を作ったりと活動をしていた。
「はぁ~最近甘いお菓子が苦手になってしまったわ」
毎日胸焼けしそうなくらい甘々な空気に当てられて、とても甘いお菓子を食べる気が起きなくなったのだ。
今、シオンがモグモグと噛んでいるのは塩昆布であった。
「おや?令嬢が渋い物を食べているね?」
図書室で読書しながらオヤツを食べていたシオンは驚き振り向いた。
「失礼。驚かせたね………って、なんだシオン令嬢だったか」
「カール様、私だって気付いていたでしょう?」
食べる姿が見えたのなら前の方から見ていたはず。
どうして後ろから来たのかはナゾだけど。
カール様はノア王子の側近である。
無表情で周囲からは怖いと恐れられているが、シオンは動じず、王子達の恋愛相談の同志の仲になった。
「シオン令嬢のお陰で助かっているよ。私も甘いのは苦手でね」
カールはシオンの塩昆布を袋から1つ取って食べた。
「せめて食べてもいいですか?ぐらい言って下さいよ」
「う~ん?そうだね。図書室は飲食禁止だよ?口止め料ね」
うわっ!性格悪いぞ!?
「それより、ノア王子とマリア公爵令嬢のデートの下見に付き合って欲しいんだけど、明日は空いているかな?」
はっ!そうだった!?
あの二人が街に出掛けたいと行っていたんだったわ!
「わかりました。大丈夫ですわ」
「よかった。明日迎えにいくよ」
シオンは了解です!と答えた。
カールはすぐにそれだけ言うと出て行った。
「カール様は流石ね。確かに下見しておかないと何かあったとき私のせいになっちゃうしね」
流石は王子の側近と感心しながらシオンも図書室を後にするのだった。
出て行ったカールは───
『よっしゃー!シオン令嬢とデートだ!』
令嬢達に怖がられているカールは、平然と自分と接してくれるシオン令嬢に即座に恋に落ちた。
王子達の甘々恋愛相談を受けているシオン令嬢に好感も持てた。
これを気にシオン令嬢と仲を深めたいと思うカールだった。
ガシッ
肩を掴まれて振り返るとノア王子がいた。
「カールにも春がきたか。シオン令嬢なら私も賛成だ。応援するよ!」
「ウフフ、シオン令嬢に目を付けるなんで、なかなか良いですわ。私も応援致します♪」
恋愛を語るには最悪な二人に捕まり、真っ青になるカールだった。
「ハックション!ズズッ、誰か噂でもしているのかしら?」
ここ後、シオンと恋仲になれたかは神のみぞ知る。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
【あとがき】
レイチェル・バイトドック侯爵令嬢
『バイトドック』→英語で『噛ませ犬』
王子と公爵令嬢の恋愛相談係り。お前ら私を挟んで恋愛すんな!もう直に言いやがれ! naturalsoft @naturalsoft
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