バーカウンター4(ギムレット)

Danzig

第1話

バーカウンタシリーズ4(ギムレット)



女性が一人部屋に入ってくる


バーテンダー:いらっしゃいませ


バーテンダーに近づく女性


女:いる?


バーテンダー:はい、少し前から奥に・・・


奥に目配せをするバーテンダー


女:やっぱり、ここだったのね

女:で、どう?


バーテンダー:もう、マティーニを5杯ほど


女:まぁ・・・相当ね


バーテンダー:何かありそうでしたので、2杯目からは、少し軽めにはしてありますが、それでもかなり・・・


女:ありがとう、悪いわね


バーテンダー:いえ


男性に近づく女性、

男性の横に立つ


女:ここいい?


男:あぁ、お前か・・・

男:好きにしろよ、どうせ座るんだろ?


女:あら、随分と不機嫌ね


男:ほっとけ


女:あら、あら


男性の横に座る女性


女:マスター、ギムレット


バーテンダー:かしこまりました


男:ギムレット?

男:・・・何か言いたそうだな


女:別に・・・


少しして女性の前にギムレットが出される


バーテンダー:お待たせしました、ギムレットです


ギムレットを見つめるが手を付けない女性


女:聞いたわよ・・・・喧嘩したんだって


男:ふん、やっぱりか・・・

男:ほっといてくれ


女:まったく・・・そういう所、相変わらずね


男:相変わらず?


女:そう、子供みたい


男:ふん・・・

男:マスター、もう一杯作ってくれ


バーテンダー:かしこまりました


女:あなたはいつもそうね


男:どうせね・・・


グラスの脚に手を付ける女性


女:私の時もそうだった・・・


女:あなたは、いつも自分で全部背負い込んで

女:それで一杯になっちゃって

女:だまり込んで何も言わない


男:・・・・(言葉にならないため息)


女:だから、女は不安で不安で

女:付いて行くのが怖くなっちゃうのよ


男:悪かったな


女:誰にでも優しいくせに・・・

女:肝心の自分の彼女が寂しい思いをしているのに

女:それに気付かない


女:たとえ気付いたとしたって・・・

女:不器用でどうしていいかわからない・・・


女:そりゃ、彼女だって愚痴の一つも言いたくなるわよ


男:あぁ、お前には悪かったと思ってるよ


女:今は、私の事じゃないでしょ


男:・・・とは言ってもな


女:誰?『これが最後の恋だ』なんて言ってたの


男:それは・・・


女:これを逃したら、あなた一生一人なんでしょ?


男:でもな、

男:どうしていいか分からないんだよ


女:馬鹿ね、黙って抱きしめてやればいいのよ


男:でもなぁ・・・


女:ギュッと抱きしめられれば、不安な気持なんて飛んでいくもんよ


男:・・・(言葉にならない)


女:あの子・・・いい子ね


男:ふん

男:マスター、俺のマティーニは?


バーテンダー:申し訳ございません

バーテンダー:ただいま、ジンが少なくなってしまいましたので

バーテンダー:イギリスまで買い付けに行っております

バーテンダー:もう少々お待ちください


あきれた表情の男


男:もういいよ

男:マスター、ご馳走様

男:また来るよ


バーテンダー:恐れ入ります


大きな独り言をいう女性


女:あぁ、そうだ・・・

女:確か星を見るって言ってたっけなぁ


女:思い出の場所ってところで・・・


男:ふん


立ち去ろうとする男性

ギムレットに口をつける女性


女:私はもうギムレットに口を付けちゃったけど

女:あなた達はギムレットにはまた早すぎるんじゃない?


男:レノックスか・・・

男:お前は昔から好きだったよな


女:ふふ


男:じゃぁな


バーテンダー:ありがとうございました


店を出る男性


女:まったく、世話がやけるわね

女:マスター、おかわり


バーテンダー:かしこまりました


ギムレットを作るバーテンダー 


女:ほんと、何やってんだろう私・・・

女:なんかバカみたいね


バーテンダー:お待たせしました、ギムレットです


女:ありがと


バーテンダー:でも、

バーテンダー:いい女って、そういうもんかもしれませんよ


女:いい女って言われても、結局、一人じゃねぇ・・・

女:別にいい女じゃなくてもいいんだけどなぁ


ギムレットに口をつける女性

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