〜IF.MOMOKA〜 第2話 そのマットは空気しか入っていなくて

 「エッチしよ、桃花ちゃん」


 「なんて性に貪欲な男なの......」


 現在、俺は一糸まとわぬ桃花ちゃんと一緒に浴室に居た。


 彼女は不躾にも許可なく浴室に入ってきて突っ立ている俺と、同じくいきり立っている息子に、まるで危険物でも見るかのような視線を向けてくる。


 おっぱい丸出しな上に、警戒心も丸出しとは。


 「背中流すよ」


 「絶対嘘じゃん」


 どうしよう、彼女が全く信じてくれない。


 大人しくおっぱい揉ませろよ......。


 俺は彼女の拒絶を無視して、ボディーソープを自身の手のひらに塗ったくった。このボディーソープは桃花ちゃんの主張の下、敏感肌に適した低刺激性のボディーソープを備え付けている。


 そのボディーソープが塗られた手を、彼女の背中に当てた。


 「ん」


 ボディーソープはそこまで冷たくなくなかったはずなのだが、桃花ちゃんが艶のある声を漏らすので、俺は彼女の背中から胸へと手を滑らせた。


 「あッ。も、もう前なの......」


 「背中を洗うなんて申し訳程度だからね」


 「自分でそれ言っちゃダメでしょ......」


 禿同。でも手が滑っちゃったのだから仕方ないもみもみ。


 桃花ちゃんの柔肌はもちろんのこと、全身スベスベでモチモチだ。


 かと言って、彼女はぽっちゃり体型とかではない。腰の辺りとかちゃんとキュッと締まっていているし、世の女性が求めるプロポーションそのものではなかろうか。


 おっぱいが大きいことは再三主張してきたが、彼女の臀部も非常に形がよく、そこから足先にかけてのムチムチ感が素晴らしい。


 「お、お兄さん、そこ、まで......洗わなくて......いから」


 と言われて気づいたが、どうやら俺は右手の指を彼女のへそに、左手を恥丘へと当てていたようだ。


 そこが敏感だったのだろう。彼女はピクッと身を震わせていた。


 「じゃあ洗い流そうか」


 俺はそう言って、浴室の壁に掛けてあるシャワーヘッドを手に取って、空いている手の方で水温を確かめてから、彼女の身体に付いている泡を洗い流した。


 「ん......ふぅ」


 最初は肩から。泡で隠れていた彼女の白肌が姿を見せる。


 そこから徐々に下へと湯水を当てていく。


 「おっと、脇もちゃんと洗い流さないと」


 「あッ」


 俺は彼女の両腕を自身の首裏まで持ってくるように持ち上げて、そこで互いの手を組ませる。


 必然、あらわになった彼女の乳房が前に突き出るようになり、その全貌が眼前の鏡に映し出された。


 息をやや荒くして、湯水に当てられたせいか、それとも興奮からか火照ったのか、その様子は紛うことなき恍惚そのもの。


 彼女の脇に付いた泡も綺麗に洗い流されているので、その色気の塊とも言えるポーズは俺の股間にものすごい興奮を与えてきた。


 そして彼女に、自主的に俺の首裏で両手を組ませているので、その距離感から我が息子が桃花ちゃんの背に押し付けられた。


 なんて心地よくて温かいのだろう。


 「やべ、ボディーソープ出ちゃいそ」


 「やめて、汚れる」


 ボディーソープは身体を綺麗にするために使うものだぞ。それが却って汚すことになるとは、これ如何に。


 俺は前へと突き出た彼女の巨乳に付いている泡を洗い流すべく、湯水を当てた。


 「あッ」


 最初は面積の広い乳房から。


 そこから先端へと、湯水と空いている手を走らせる。


 下から支えるように、そして舐めるようにして、五指全てで彼女の豊満な胸を堪能する。まるで指が全て吸い込まれるような張りと弾力だ。


 そしてその指はやがて、


 「そ、そこは、だめぇ」


 山の頂に到達した。綺麗に整った双丘の頂点、乳首と呼ばれる箇所は、彼女の白肌から一変して桜色になっている。


 また柔肌に反して、その頂だけは硬い。


 親指と人差し指でコリコリと摘みながら、湯水を当てた。


 摘むだけでは終わらない。そのコリコリによって更に硬くなったそこを、今度は人差し指だけで小刻みに弾いてみた。


 「んッ、くぅ」


 彼女が顎を上げて、色のある息を漏らしている。


 調子に乗った俺は、その頂のすぐ下。同じく桜色の円形部分を、今度は人差し指の爪だけで小刻みに掻いてみた。


 カリカリ、カリカリと。


 泡なんてもう無いのに、まるでこべりついた汚れでも削り落とすかのように、爪でカリカリと引っ掻いた。


 「おッおッおッ」


 すると、彼女の下半身がカクカクと揺れていることに気づく。どうやら足先にまで刺激が渡ったらしい。


 やがて両の乳房を入念に洗い終えた俺は、シャワーヘッドを壁に掛けて、彼女に問う。


 桃花ちゃんの上半身は綺麗に洗われたわけだが、足の方などまだ泡が付いていた。


 俺の急な行為の中止に、彼女は物欲しそうな顔で鏡越しに俺を見つめてくる。その視線はまるで「なんで止めたの?」と言わんばかりだ。


 だが、俺は確認の意を込めて問わなければならない。


 「このまま、下も洗うね?」


 「......。」


 下も洗う。それ即ち彼女の秘部に触れることを意味する。


 無論、乳首同様、ただ湯水で洗い流すなんて野暮なことはしない。その先があることを、先程、彼女に身をもって感じさせたのだ。


 故にその許可は合意となり、交尾――じゃなくてセックスの開始の合図へと化す。


 全然言い直せてなかった。


 が、


 「......め」


 「?」


 「ダメ。そこは......自分で洗う、から」


 「......。」


 彼女の返答は拒絶だった。


 俺はショックを受けつつ、理由を聞くことにした。


 「桃花ちゃん、俺ら付き合ってもう一年経つよ。もちろん無理にとは言わないけど......ダメ?」


 「......ごめん」


 ......そっか。


 俺たちは付き合って一年経つのだが、まだ交尾――じゃなくてセックスしたことがないのだ。


 理由は簡単。桃花ちゃんがヤッても楽しくないと主張するからだ。


 実は彼女、俺と経験する前からかなり男遊びをシちゃっている子である。それは交際前から「私、ビッチだから〜」と言っていたので、最初から知っていたことだ。


 それを承知の上で俺に付き合ってもらったのに、未だにそれが叶わない。


 身体目当てで交際したのかと問われると......全く持ってその通りだが、できれば彼女の意思を尊重したい。


 それ故に未だに童貞の俺は、彼女に交尾――じゃなくて、セックスしていいか確認するようにしている。


 過去にどんな経験をしたのかわからないが、どうせヤるならお互い気持ち良い方が良いに決まっている。


 だから俺にできることは、さっきみたいに愛撫で彼女を攻めまくって、自ら俺の息子が欲しいと言われるまで刺激を与え続けることだけだ。


 「あ、安心して? ちゃんとお兄さんも気持ち良くしてあげるから」


 そう言って、彼女は俺の男根を手に取った。


 交尾――じゃなくて、セックスはさせてくれないのに、エッチなことはしてくれるのだ。


 当初、無理させているのではないか、と思って聞いてみたのだが、単に自分の中に俺のを挿れたくないと言っていた。


 それを聞いたときはEDになりかけたが、なんとかそうならずに済んだのは、こうして彼女がエッチなことを施してくれたからだろう。


 「今日は......あ、私の股にまだ泡付いているし、“すまた”にしよっか」


 “すまた”は良くて、セックスは駄目なのか。


 そこまで違いは無いと思ってしまうのは、俺が童貞だからだろうか。


 俺はセックスできないことを残念に思いながら寝そべった。


 息子は俺の残念な気持ちに反して、期待という名の海綿体をこれでもかと言わんばかりに膨らませている。正直、硬くなりすぎて痛いくらいだ。


 そんな俺の背には、某お店でお馴染みのマットがある。マットの中には空気しか入っていない撥水性のあるアレだ。色はちゃんとピンク色である。


 「い、いつの間に......てか、どこからそんなの取り出したの」


 「細かいことは気にするな。よろしくお願いします」


 「というか、毎回思うんだけど、お兄さんちの風呂場って異常に広いよね。アパートなのに」


 「細かいことは気にするな。よろしくお願いします」


 「それにすごい反り返って......さっきより大きくなってない?」

 

 「細かいことは気にするな。よろしくお願いします」


 斯くして、俺は桃花ちゃんと日付が変わるまで楽しむのであった。

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