花魁(女性一人読み)

Danzig

第1話 開かずの襖


(襖の前、侍数人が部屋に入ろうとするが、花魁が立ちはだかる)


花魁:お侍。

花魁:此方は奥に殿方を匿っておるか等とは野暮な事を聞かなんでくんなまし。

 

花魁:花魁には花魁の秘密がありんすえ?

 

(声を荒げて花魁にどくように叫ぶ侍)


花魁:嫌ざんす。

 

花魁:お侍にもかような事情があんざんしょう?

花魁:したがこの襖を開けろと仰言(おっせぇ)しても、左様ならばと ここを開ける訳にはいきんせん。

 

花魁:此ン(こん)はわっち等(ら)の戦場(いくさば)おす。

 

花魁:そう、此ン吉原はわっち等の戦場。

花魁:花魁には花魁の意地がありんす。

花魁:お侍が戦(いくさ)で命をかけて戦(たたこ)うように、わっちらも此ン吉原で意地と命を懸け戦うとるざんす。

 

花魁:意地を通す事が許されんのざんしたら、

花魁:かようにもこの襖を開けろと仰言すなら。

花魁:今、此ンでわっちを殺してから、お侍自身が、お好きにこの襖を開けてくださんし。

 

花魁:お侍が何と仰言しても、わっちはここを動きんせん。

 

花魁:さぁ、わっちを殺してくりゃれ。

 

花魁:さぁ!



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