時計の秒針
空の藍も深くなり町は閑散としていた。まるで時が止まっているかのようだ。勇気を出して玄関を開ける。
「本当に僕の親なの?」
「信じれないのも分かる。だって育てることが出来なかったから。でも理解して欲しい。詳しい事情は今は話せないけど」
「だから、慧人。これから一緒に生活してくれない?」
「2人を両親と理解するまで時間はかかると思うけど何とか頑張ってみるよ」
「ありがとう。それともう1つ。慧人に言わないといけないことがある」
「何?」
「慧人には姉がいるんだ」
「えっ」
そんな話聞いたことも無い。頭が困惑する。僕は反射的に聞き返してしまう。
「どういうこと?」
「お父さんの方の実家で暮らしていたはずだよ」
「そうなの?それって本当?」
「ああ、この後電話でもする?」
「いいよ。初対面の人と話したくないし。未だに100%本当だとも思えてない」
「そっか。時間をかけてでもいいから絆を取り戻せればいいよ。両親の償いの意味も込めて。ちょっと電話してくるね」
そう言ってお父さんは奥にある部屋へと向かった。この家は保護施設から出た時からずっと住んでいる。保護施設の人からここに案内された。来た時から生活感があり、雑貨や日用品などが置かれていた。二階建てで1人で暮らすにはもったいないくらいの広さだが3人ならちょうどいい。部屋の場所を説明しようとすると、
「この家のことはよく知っているから大丈夫だよ」
と言われた。もともと僕が来る前に住んでいたらしい。少し本当の両親なのではないかと思ったが信じきれてはいない。
「あのさ。姉の名前ってなんて言うの?」
ふと興味本位に、聞いてみる。お母さんの口から出たのは聞き馴染みのある言葉だった。
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