何でも食べちゃう妖怪のお話の裏話②

 ここで、妖怪『威針イバリ』の説明に入るわけです。威針についてはマジで上手く作れたと思ったので、これはこのままコピペして完結作の方にも使いました。我ながら、妖怪ってこんな感じで出来るよな、と大満足の妖怪です。


 で、威針の説明の後は、伏木さんの家族の話になります。完結作の方では名前と、やべぇくらい妻が好きっていう情報しか出て来なかった伏木パパ、『水鉤みかぎ』さんですが、こっちの方ではもう少し存在感がありました。水鉤さんとその妻との出会いなどが述べられます。この時までは奥さんの名前は『嘉風かふう』でした。ちなみに、彼女が明治の伝説の鍵・金庫職人岡女おかめ嘉寺よしでらというのは完結作と同じです。嘉風よしかぜというお相撲さんがいることに気づいて名前を変えました。


 この夫婦については、最終的には死別するんですけど、二パターンあってですね、


①嘉風さん、出産がもとでお亡くなりになるパターン


 めっちゃラブラブなので、まぁ子どもが出来るんですよ。これが伏木さんのお兄ちゃんですね。この時は『嘉水よしみ』君という名前でした。このお兄ちゃん、完結作と同じで見た目が完全に猛禽なんですよ。なので、産む際に嘴やら鉤爪で産道がズタズタになってしまって――、っていう。


 それで、水鉤さんは天狗の住む山に飛んで行って、万病に効く茸的なものを分けてくれと頼むわけですが、まぁ許されない。何度か頼んで頼んでやっと持ち帰ったら既に2年くらい経ってて、奥さんも子どもも死んでて――、っていう。お前これほんとにコメディのつもりで書いたんか? って。


 でも、やっぱり妖怪との子どもなので、一緒に焼いたりお墓に入れたり、っていうのがないわけですよ。その辺に捨ててて。そしたら、やっぱり妖怪はタフだから、一瞬死にかけて地獄とか行くんですけど、何とか復活して生き延びてたりして、そんでその彼も同じ金庫を狙ってるみたいな話になるところでした。



②嘉風さんと先に離婚するパターン


 やはり人間と妖怪の結婚ってうまくいかないんですよ。特に彼は威針という、人間に対して威張りまくれるやつですから。水鉤さんはだんだん疑心暗鬼になるわけです。妻が俺に対して従順なのは、威針の力のせいなのでは、みたいな。それで結局別れちゃうんですけど、その時すでに奥さんの方には子どもがいるわけです。嘉水君ですね。


 ただ、結局、①と同じです。嘉水君を産んだことで嘉風さんは亡くなります。結局、人間が妖怪を出産する、というのはかなり命がけなのです。


 

 まぁ①にせよ②にせよ、兄の嘉水君はどうにかこうにか生きていて、母の形見である岡女金庫を探している、という物語でした。伏木さんとは腹違いの兄妹です。ただ、嘉水君は、あくまでも見た目が妖怪ってだけで、威針の力はありません。というわけで、協力者がいないと金庫探しも容易ではありません。おいおい、一体誰なんだよ協力者。そんで、そんな血眼になって探す金庫も何だよ。中に何入ってんだよ。来る日も来る日も自分で書いた小説に苦しめられる日々が続きました。行き当たりばったりで書くからこういうことになるのです。


 この辺で、「この展開は無理がある」と気付き、『開かホニャ』の辺りまで戻って書き直したわけです。


 それでですね、それはそれとして、そろそろどんなラストにするのかも決めとかないとな、と思ったわけです。


 初期に浮かんだやつはこうです。


 とりあえず、悪食アクジキが飢饉で餓死した子どもがなる妖怪というのは決まってました。生前の一番飢えて苦しかった時の夢を繰り返し見るのは、食人へのハードルを下げるためというか、極限まで空腹にさせて正気を失わせて人間を食べるため、みたいな理由がありました。生きた人間を食べると地獄に行けるので、手違いで地上で生まれてしまった悪食は本能で地獄に落ちようとするわけですね。


 たまたま秋芳君の相棒が多々良だったために、その夢をきれいに食べられていたので、「別に(生きてる人間は)食べても良いけど、それより美味しいものたくさんあるからいーらない」みたいな、そんな感じで、決してそこまで頑なに「生きてるものは食べない」と決めていたわけではありませんでした。


 なので、本当にお腹が空いて、周りに食べ物がなかったら、食べてしまう設定だったんですよ。だけど、多々良は暖々のじいさんから「秋芳と一緒にいたかったら、絶対に生きてる人間を食わせるな」と言われていて、必死に食べ物を用意していた、と。暖々は悪食がどんな妖怪かも知っていたわけです。


 そんな中、秋芳君の悪夢がめちゃくちゃ美味しいという噂がめっちゃ広まって(何せ『悪夢シュラン』に載っちゃったから)、多々良がお出掛けしている時に、彼は誘拐されてしまうんですね。

 だけど、彼をさらった獏は、秋芳君が例の塊を食べた時くらいしか悪夢を見ないなんて知りませんから、どうにか悪夢を見せようと、ご飯を抜いてみたりするわけです。それでブチ切れた秋芳君が、とりあえずその獏を食べてそこから脱出。生きているものを食べたことで、何か箍が外れて、そこから手当たり次第に色々食べながら家に帰ろうとするところで多々良に会って、今度は彼女に襲い掛かるわけです。ちなみに、ギリ人間は食べてません。


 それで、多々良はですね、本気を出せば秋芳君を返り討ちに出来るんですけど(何せ幼少時に父親を噛み殺した前科アリ)、ボスが大好きだから出来ないんですね。もう食べられても良いかな、なんて諦めたその時!


 杣澤君ですよ。

 ここで杣澤君がまさかの活躍をするのです。

 彼もまた秋様捜索に乗り出していたのです。リュックとか、服のポケットとかに食べ物をパンパンに詰めて登場です。


 それで、多々良に喝を入れるんですね。お前の秋様への愛はそんなものかと。ヒューッ、熱い展開! それで、秋芳君が多々良に噛みつく前にその口の中にとにかく食べ物を突っ込むわけです。


 それで多々良も、秋芳君の好物を一つ一つ叫びながら食わせててですね、テレビとかで見た「これ食べたいね」みたいなやつなんかもね、「一緒に○○食べるって約束したじゃないですかぁ!」とかね、そういうことも叫びながら食べさせてですね、それで、やっと落ち着く、っていう展開でしたね。


 もうね、ここからどうやったらコメディに戻せるんだろう、って。

 

 無理だな、ってことでやめましたね。こういう血生臭いエンドは駄目だな、って。

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