第十二話 Weltwals, the city of beginnings 1
「そうか、でそんな、名前からしてわかりやすい店があるのか。それ、一体何処にあるんだ?」
リリアナは胸に手を当て鼻息をわかりやすいくらいに立ててふんぞりかえる。
「ふっふっふっ、それじゃあ、私がその場所まで案内してあげる!!私っ、こう見えてもこういうの詳しいんだから。」
「おお、頼りになるー」
それが本当ならな。
「ふん。これから私のことを、完璧なる絶世の道案内の女神として崇めてくれても良いよ。」
「いや結構です。寧ろ。」
崇めたくないタイプだ。というか道案内の神様でいいのか?折角神を名乗るにしても案内役じゃ神しては凄くしょぼ位であろうに。
そして彼女にあっさりその能力を計る場所を案内してもらう事になったのだが........事はそううまく運ばず。残念ながら、案内役の神様ではなかった。
「うーーん?あれっ?おっかしいなここら辺なはずなのに(小声)」
さっきから彼女は立ち止まり、うーん、うーん、と言うだけだった。このパターンは、深読みしなくともわかる。見栄を張って知らぬ道を、知っているフリをしたものの、いざ案内してみると中々見つからないのであろう。
「さっきからどうした?さっきからずっーと、うーん、うーん、って唸りだして?もしかしてうn.....グハッ」
俺は彼女を心配していたつもりだったのだが、何故か彼女の逆鱗に触れ、綺麗な右ストレートで右頬を思いっきり殴られた。事実は稀に隠さなければならないと言う事であろう。
「殴られた。痛っ」
「あはは、次言ったら叩き潰すよー。」
「うーん、うーん....」
「あー、また始まったな。」
一体なんで、さっきから唸っているのか、と思っていたが、理由が少し分かってしまった。
『ん?ちょっとまてよ、まさかこいつ.....自分から何処にあるか、分かるって言い出したのに、実は何処にあるか、そもそも存在しているかどうかが、全くわかっていないとかではないだろうな。』
するとその少女は立ち上がりこちらを見た。どうやら何処の道から行くかの結論がやっと出た様だな。それじゃあ無事、再出発かな。待っていろ。街!!
「うん!わかった、今簡単に、率直に、単純に、直球に今の言ったらね。」
「うん。どうぞ.....」
聞く暇も無い。
「うわーん、迷ったー。これからど~しよ~。」
だろうな。大体の反応で分かる。
「おいーーーっ。さっきの威勢は何処にいったー。これからどうすんだよ。」
「.....さあ?」
コイツ、目に光が入っていない。腹立つ。
「ぐぬぬぬ、コイツめ。」
いやはや、初手から躓いた。まさか、始まりの街にも行けないとなると、もう俺はこの世界で生きていけないかもしれないな。
しかし、そう思い俺がふと見た先にがっつり看板に能力「調べるよ屋さん」と書かれていた。
そこが俺たちが目指している、目的地である事は誰が見ても明確であった。
「こいつの眼は節穴か?視力0.08の乱視かな。ん?ちょっとまてよ。いっかいこのまま黙っていてもちょっと面白そうだな。」
「確かとにかく西に向かえば行けるはずなのに。」
「おーい、おーい、おーい、おーい、笑、ちょっと待て、お前。本当は何処にあるのかわかってないだろ。」
「.....うん.....」
「ちょっと見栄張っただろ。」
「.........」
沈黙って事はそう言う事だ。
「図星か」
しかも方向は西じゃなくてま反対の東の方角だし。
「お前視力悪いのか?能力屋はあっちの方にあるぞ。」
「よーし、そうと決まればいくわよー」
「あっ、こいつ急にダッシュしやがった。さっきのこと誤魔化しやがったな。」
俺も負けじとダッシュしたが、万年運動不足なので難なく負けた。兎に角、贅沢なんて言わないんで、速さとかよりも持久力が欲しいです神様。まだ、貰ってないんで検討、お願いします。
「はあ、はあ、俺らは一体何を争っていたんだ。」
「はあ、はあ、勿論スピード勝負ですよ。この勝負余裕で私の勝ちですね。」
お互い謎の対抗心を張り巡らせた結果、生まれたのは無駄な疲労感だけであった。息切れし、肺に負担を掛けた。正直あんな所から走る意味など無い。
「まあ、今回はちょっと手を抜いたからな。」
「ちなみに負けた方は勝った方にご飯を奢りねー。」
ニヤリと笑うリリアナ。俺は少し青ざめ、動揺する。後出しはやめてください。
「はい?ちょ、それは聞いてないんだが。いつ、俺が奢るだなんて......」
「冷静に世の真理から考えてみて。果たして敗者が勝者に意見できるかなぁ。」
あっ、なんだろう。くっそ腹立つ。コイツにかなり勝ち誇った顔で言われた。まあでも、黙って安い飯でも奢ればそれで満足だろう。そもそも、この世界の安値枠はなんだろう。
そして、そういう間にいつのまにか能力測るよ屋さんに着いていた。コイツ思ったより足速いな。今度コツ教えてもらおう。
「はあ、はあ、やっと着いたぜぇ。」
ようやく始まりの街、所謂スタートラインに立つ事が出来た。そして、すぐ目の前には街の入り口に、大きな垂れ幕が掲げてあった。それをボーッと見ていた俺に、リリアナは説明する。
「ようこそ!!此処が始まりの街‼︎【ヴェルト・ヴァルス】だよ。」
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