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アイタラは生粋のファレ・タガタアっ子だ。
両親は歴史資料館のスタッフで、その熱心な仕事ぶりもあって街の人々の信頼が厚い。アイタラは近所の人々から愛されて育った。警備員を志したのは大好きな故郷を守るためだと言う。なんとも真っ直ぐで目が眩しくなる話だ。
好きなものは皿いっぱいのポイ。これはタロ芋を餅状にすり潰したもので、我が国のみならず南太平洋の島々で広く親しまれている。ソウルフード、というものなのだろうか。日本で言う白米みたいなポジションだ。アイタラはこれを新鮮なうちにたらふく食べるのがお気に入りらしい。一番合うおかずは豚の丸焼きとのこと。都会っ子のはずなのに、なんとも田舎の子供みたいな感性である。尋ねてみたところ、母方の祖父がワイ・プルの方で農場を営んでいるのだとか。ここにおいておじいちゃんっ子という情報が付け加えられた。
嫌いなものは嘘と、鮮度が落ちて酸っぱくなったポイ、
……いや、このくらいにしておこう。
なぜ僕がアイタラ青年のプロフィールを綴り続けているのか。
拘束時間、退屈しのぎに僕を監視している警備員に話しかけたところ、びっくりするほどにチョロかった。チームの中でも最年少で、年上の先輩たちに弟のように可愛がられているらしいが、なるほど、役所に漂う物々しい雰囲気のなか、彼一人だけきらきらした表情で張り切っている。今日が初めての仕事なのだろうか。──今年で二年目らしい。
まあともかく、アイタラ青年は話しかければ愛想よく喋ってくれた。そして交代の時間ぎりぎりまで話し込んだせいで同僚に怒られて、しょんもりした顔で帰っていった。無性に心配である。彼は無事に職務を果たせているのだろうか。
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