第6話


(「町方に出向いて何もかもお話します     ねずみ小僧」)

(と書いた書置きを見て、慌てふためいている悪人たち)

(そこへどこからとも無く声が聞こえてくる)


何をそんなに慌ててるんだい?


(ビックリして声のする方をみる悪人たち)


おめぇ達が探してる盗人は

さっきからここにいるじゃねぇか


おやおや、自分たちが探してる人の名前くらい、

知っておいてもらいたいもんだぜ


俺かい?

今更名乗るのもおこがましいが、折角だから名乗っておこうか

 

俺の名は「ねずみ小僧次郎吉」

あぁ、本物だよ


(困惑する悪人たち)


おめぇ達の探してる偽者のねずみは、

今頃、日本橋に、ふんどし姿で吊るされてるだろうよ。


どうした?

折角、本物がわざわざ出向いてきたんだ

ちったぁ喜んでくれたらどうなんでぇ


(悪人たちを睨むねずみ小僧)


おめぇ達、ちょいとおいたが過ぎたようだな

ねずみ小僧の名を騙(かた)った、おめぇ達の企み

高くつくぜ


(異様な臭いに気付く悪人たち)


ほう、何か臭うのかい?

そりゃ、きっと煙の臭いだろうさ


(火事かと思い困惑する悪人達)


おっと、見くびってもらっちゃ困るぜ

ねずみ小僧はただの盗人、火付(ひつけ)けなんか、しやしねぇんだよ


だが、この家中の、火鉢という火鉢に「けむり玉」は放り込んでおいたけどな

なぁに、火は付きゃしないから安心しな


でもなぁ、外の連中は、この煙を見て、どう思うんだろうな?

ははは


(外からカンカンカンと鐘の音が聞こえる)


ほう、もう半鐘も鳴り始めたみたいだな

そろそろ火消しが飛んできて、この家を片っ端から壊してくれるだろうよ


それだけじゃねぇ

その後で、町方が瓦礫の中から

おめぇ達の悪事の証拠を、見つけてくれるって寸法さ


ははは

もう観念するんだな

おめぇ達のような悪党にゃ、お白州が似合ってるよ


ねずみ小僧を名を騙(かた)った事を、せいぜい後悔するんだな


じゃぁな、あばよ



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