男ねずみ小僧次郎吉（合冊）

第3話

（長屋をあるくねずみ小僧）

（長屋の連中が集まっているのに気づく）

あ？

どうしたんだい？　みんなで集まって。

ほう、かわら版かい、お前達も噂話が好きだなぁ　ははは

で、何か面白い事でもあるのかい？

へー、ねずみが出・・・

ねずみってねずみ小僧の事かい？

そんなバカな！

・・・いや・・・なんでもねぇよ。

で、そのねずみは今度はどこの屋敷に盗みに入ったってんだい？

殺し・・・

ねずみ小僧がかい。

そんな・・・ちょ、ちょっとそいつを見せてくれねぇか

（かわら版を奪って読む）

『義賊と謳（うた）われたねずみ小僧

二十日丑（うし）の刻、日本橋三河屋に忍び入り、金子千両盗み

使用人及び、一家五人を惨殺

三河屋は日頃から人情に厚く、

日雇い人足（にんそく）に米を分け与える事でも知られ・・・』

これは何かの間違いに決まってらぁ

ねずみ小僧っていやぁ、いつも悪いやつのところからしか金は取らなかったじゃないか

それに、今までねずみは、盗みはするが殺しはしなかったろ。

だから、これは何かの間違いなんだよ

「でも、かわら版に」って・・・

おい、お前

かわら版とねずみとどっちを信じるってんだい

「わからない」って・・・そんな・・・

おい、ちょっとお前達、どこ行くんだよ

俺の話を・・・・ちょ・・・

（逃げるように散り散りに去っていく町人たち）

あぁ～！　ちくしょう！

ったく、いったい何があったってんだい

完