第4話

(仲間と打ち合わせるねずみ小僧)


あぁ、あたしもさっき長屋で聞いたよ


ねずみの偽者が出たらしいね

しかも殺しまでするとはねぇ・・・


日本橋の三河屋・・・

それだけじゃないよ。

一昨日(おととい)は深川の木曾屋でも、ねずみの名を騙って殺しをしたそうだよ


三河屋も木曾屋も、どっちも昔から真っ当な商売をしている店さ

ねずみ小僧とは生涯無縁の連中だよ

それがどうして・・・


まったく、何処のどいつだい

ねずみ小僧の名前を汚す野郎は


しがない三下がねずみの名前を騙って(かたって)いるのか

それとも

誰かがぬずみを陥れ(おとしいれ)ようとしているのか・・・


あぁ、多分そうだろうね

名を売りたいような駆け出しの三下なら

わざわざ「ねずみ小僧」なんて名乗らないね

自分の名前を売ろうとするだろうさ

それに・・・

自分も義賊のつもりなら、殺しなんてしないだろうさ


だとしたら、この一件

ちょっと厄介な事になりそうだね


あぁ、あたしもそう思うよ

下手に動くと本物のねずみを誘き出す

カラクリに足をすくわれるかもしれねぇな・・・・


そんな事は分かってるさ

でもね、ここまで「ねずみ小僧」の名を汚されちゃ

出て行かねぇ訳にはいかないのさ

例えどんな罠が待ち構えていようと・・・行かなきゃね


このまま指を銜えて見てたんじゃ

ねずみ小僧の名は地に落ちちまう・・・


「ねずみ小僧」ってのはね

どん底の生活でも歯を食いしばって生きている

真っ当な町人たちの最後の光なんだよ


これで、ねずみ小僧まで悪党に成り下がっちまったら

そんな人達の生活が真っ暗闇になっちまうよ

それだけは、できないんだよ


なぁに、そんなの焦っちゃいないさ

どこに黒幕がいるのか、まずは探りを入れないとね




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